研究課題/領域番号 |
18K11601
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
武永 康彦 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20236491)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ゲーム / 必勝性 / 計算複雑さ |
研究実績の概要 |
オンライン性を持つゲームの必勝性に関しては、従来から研究対象としてきたぷよぷよについて、盤面の幅と色数が変化した場合の必勝性の研究を引き続き行った。ぷよぷよとは、落ちものゲームと呼ばれるゲームの一種であり、本研究では1人ゲームとして扱い、任意の入力列に対して永久に定数の高さの盤面でプレイを続けられるとき必勝であるとする。今後の入力を知ることができる先読みが可能な場合について、どれだけ先読みが多くても盤面の幅に対して色数が非常に多ければ必敗となることを、盤面の幅が2および3の場合に対して証明した。具体的には、盤面の幅が2の場合10色以上、3の場合26色以上で必敗となることを示した。また、これまで先読みがある場合にのみ必勝性を示せていた、盤面の幅が3、色数が3の場合について、先読みなしでもプレーヤの必勝となることを示した。 また、グラフ上のゲームについては、グラフ上のペグソリティアの必勝性および計算複雑さについて研究を行った。ペグソリティアとは盤面上からペグを取り除き1個にすることを目的とする1人ゲームであり、これを任意のグラフを盤面として一般化したゲームを扱った。結果として、与えられた盤面の形状が必勝であるか、つまり適当なペグを1個だけ取り除いた盤面からペグを1個にできるかという判定問題がNP完全となり、計算困難な問題であることを証明した。また、通常のペグソリティアと同様にペグの移動できる辺に制限がある場合について、パスとサイクルの直積で表せる盤面の多くについて、1個を除くすべての頂点にペグがある状態からペグを1個にできることを明らかにした。 この他、七並べを一般化した一般化七並べについて、プレーヤ2人、スート数が2の場合について、その必勝性の判定方法を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンライン性を持つゲームについては、その代表例としてぷよぷよを主な題材として研究を進めてきた。その中で大きな課題の一つであった、先読みが無限に可能な場合、すなわち入力を全て知ることができる場合の必敗条件について、盤面の幅が小さい場合に限られるが、色数が十分多ければ必敗となることを証明できたことは重要な進展であると考える。 グラフ上のゲームについては、ペグソリティアやそれを2人ゲームとしたものにおける与えられた盤面からの必勝性の判定手法については、盤面の形に強い制約を加えた場合でも非常に難しい問題であり、これまで成果が得られていない。代わりに任意のグラフを盤面とするグラフ上のペグソリティアについて、盤面の形状に対する必勝性判定問題の計算困難性を証明することができた。 その他のグラフ上のいくつかのゲームについても、その必勝性および計算量の研究に着手している。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、オンライン性を持つゲームについては、ぷよぷよの必勝性について引き続き研究を進める。残された重要な問題として、盤面の幅とピースの色数を変えた場合の必勝必敗条件の間にある差を縮める、幅4以上の場合にどれだけ先読みがあっても必敗となる条件、などが挙げられる。いずれも容易な問題ではないと考えられるが、解決を目指して研究を進める。その他のオンライン性を持つゲームについても、まず入力が全て分かっている場合の計算量を示し、その後オンライン性を持つ場合の戦略について研究を行う。 グラフ上のゲームについては、今後より重きを置いて研究を進める予定である。既に研究を進めているペグソリティアについて、グラフ上の任意の辺で飛び越しができるルールと、制約があるルールそれぞれのもとで、様々なグラフが必勝であるか必敗であるかを明らかにする研究を行う。また、cops and robbersゲームについて、我々の提案した変種のルールにおいて、種々のグラフ上で勝利するために必要な警官の人数について研究を進める。グラフ上の他のペグ移動ゲームについても、1人ゲーム、2人ゲームの両方を考え、それぞれの計算困難性の証明および種々のグラフ族における必勝性判定について研究を行う。また、カードゲームにもグラフ上への一般化が可能なものがあり、それについても研究を行う予定である。 これら以外のゲームについてもその計算量や戦略に関する研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に学生の発表も含めた研究成果の発表、資料収集のための出張を数多く予定していたが、新型コロナウイルス問題により、出張が全てキャンセルとなったため、大きな次年度使用額が生じた。これについては、残り2年の研究期間の間に、出張が可能な状況になれば主に旅費として使用する予定である。
|