研究課題/領域番号 |
18K11608
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
水口 充 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (60415859)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エンタテインメント性 / 偶然性 / 主観的確率 / 制御幻想 / 操作感 |
研究実績の概要 |
今年度は偶然の遊びの面白さの拡張を目指した。これまでの研究により、偶然の遊びにおいては、遊技者が主体的に関与することでより楽しめることが明らかになった。そこで、入出力を通して主体的な関与を強化する方法を検討した。 入力手段に関しては、操作感の拡張を目指し二つの手法を試みた。一つは、スマホリングと称される把持アクセサリーのリングの回転で操作を行うデバイスを作成した。画面のタッチ操作よりもリングという物理デバイスの操作はより操作感が高く、遊びへの関与度を高めることが期待できる。もう一つは、機械音の付与による自動車シフトノブの操作感の強調システムを作成した。音による疑似触覚で操作感が強調され、より楽しめることが期待できる。それぞれ、予備実験では一定の効果が見込めることが示唆された。 出力手段に関しては、従来手法の検証と拡張の双方で検討した。従来手法の検証としては、これまでの研究で抽選結果の通知方法で面白さが変わることを明らかにしたが、一般的には暗黙の共通認識的な表示方法が使われている。その一つに色の使い方がある。ソーシャルゲームの抽選(ガチャ)やパチンコ・パチスロなどの多くで共通して、虹色・金色・赤色は期待度の高い演出に用いられ、青色・緑色は期待度が低く設定されている。これを逆に設定した抽選で期待度の感じ方を調査したところ、体験する結果の方が色に関する常識よりも期待度への影響が強い結果となった。出力の拡張としては、温冷感覚呈示の利用を検討した。「手に汗握る」などの表現の通り、人は興奮状態にあると発熱・発汗する。ソマティック・マーカ仮説に基づけば、手を温めることで興奮状態を誘うことができる可能性がある。そこで、ペルチェ素子を使った温冷感覚呈示デバイスを作成し、抽選の期待度に応じて温度を調節し期待感を提示するシステムを作成した。予備実験の結果、効果が期待できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染拡大状況下のため、前年度計画していたような実験用ゲームを用いた偶然の遊びの楽しさに寄与する要因の分析や、今年度試作した装置やシステムの有効性を十分に検証するための実験については実施できず、予備調査的な実験を行うに留まった。 一方で、前年度計画したタンジブルユーザインタフェースや温冷感覚呈示デバイスに加え、音による疑似触覚を用いた操作感の拡張と、従来の通知方法の検証を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度取り組んだ入出力手段について、有効性を検証していく。スマホリング型操作デバイスについては、回転操作を使った抽選などの遊びを複数実装して効果を検証する。音による操作感の拡張については、実験および観察を通して効果を分析する。温冷感覚呈示デバイスについてはデバイスの改良、および既存ゲームと連動するシステムを作成して効果を測る。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大状況下のため、成果発表および研究動向調査に予定していた旅費の執行が無かった。また、計画していた評価実験については実施できず人件費・謝金の執行も無かった。 残額は次年度にCOVID-19の感染拡大状況に配慮しながら、実験用消耗品、研究調査および成果発表旅費、実験補助人件費および謝金として執行する。
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