研究課題
本研究は,近年入手が可能になった衛星搭載 L-バンドマイクロ波センサ(放射計,散乱計,合成開口レーダ)のデータを利用し,熱帯低気圧中心部などの高風速・強降雨域の海上風速を高精度で推定する手法を開発することを目的とした.これまで,衛星観測による高風速域の海上風速は,基準となる正確な現場観測データを得る手法がないため,主に,中風速域で求めた係数等を高風速域に外挿することで推定されており,精度の評価も難しい状況であった.これに対し,本研究では,降雨の影響が少ない L-バンドマイクロ波センサの観測データを利用し,最近の国際ワークショップで推奨された校正済みの航空機搭載マイクロ波放射計のデータを基準風速とする手法を適用して,高風速(20 m/s 以上)・強降雨域の海上風速を高精度(± 7 m/s 以内)で推定するアルゴリズムを開発し,台風・ハリケーン・サイクロンなどの熱帯低気圧周辺の高風速域のデータセットを作成した.米国海洋大気庁の研究協力者から入手したドロップゾンデデータで校正済みの航空機搭載 Stepped-Frequency Microwave Radiometer (SFMR) の最新版データに空間平滑化を施すことによって作成した衛星センサの空間分解能(30~60 km) に対応する基準データを使用して,Aquarius 衛星および SMAP 衛星に搭載されたL-バンドマイクロ波放射計用の風速算出アルゴリズムを作成した.このアルゴリズムで算出したハリケーン周辺の高風速・強降雨域の海上風速データは,残差の標準偏差 3.8 m/s 程度で基準データとよく一致することが示さ,当初の目標精度は達成できた.このアルゴリズムを使用して,2011-2022年の北太平洋・北大西洋の台風・ハリケーン周辺の海上風のデータセットを作成した.
すべて 2022
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)