研究課題
地下水に溶存する気体、特に希ガスや炭素といった揮発性元素は、地震や火山の活動を調べるのに適している。その時間的・空間的変化は、地下構造の変化や深部流体の付加に影響されるため、観測する意義は大きい。本研究の目的は、水中で気体のみを透過する気体透過膜を使ったパッシブサンプラーを用いて、地下水井戸の任意の深さで地下水溶存ガスを観測することである。昨年に引き続き大分県別府市にある深さ300mの京都大学の試験温泉井戸で溶存ガス試料を採取した。ワイヤーでサンプラーを垂らすことができるので任意の深さで好きな数だけ試料を採取することができる。採取した深さはこれまでと同じ50m間隔の6点で、採取した時期はこれまでと同じ夏に行なった。回収したサンプラーは鉄製のクランプで銅管を密封し実験室に持ち帰って分析を行なった。一部の試料では高温のために銅管が変色するほどであったが、サンプラー内部に水は入らず、むしろ高温の方が溶存ガスともともと銅管に入っていた空気の入れ替わりがうまくいっているように見えた。パッシブサンプラーに採取した溶存ガスは、ヘリウム同位体分析用の高感度質量分析計、ガス組成分析装置、安定同位体用質量分析計を用いてガス組成および同位体の測定を行なった。その結果、昨年と同じような傾向が見られた。つまり深さ方向にヘリウムの同位体比および濃度(ヘリウム/ネオン比)の増加が見られた。さらにガス組成や窒素・炭素の同位体も測定ができるようになり、これらの鉛直分布を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、深さ300mの試験温泉井戸で試料採取を行なうことができ、ヘリウムや炭素の同位体の鉛直分布が得られ、予定通り進展している。
高温高圧の悪条件下でのサンプラーの有効性を評価するとともに、回収した試料の溶存ガスの濃度や同位体の分析を進める。分析した結果から、ヘリウムや二酸化炭素の濃度・同位体比の時間的・空間的変化を調べ、その変化から溶存ガスのフラックスや温泉水の流動について考察する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 11件)
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