研究課題
地下水に溶存する気体、特に希ガスや炭素といった揮発性元素は、地震や火山の活動を調べるのに適している。その時間的・空間的変化は、地下構造の変化や深部流体の付加に影響されるため、観測する意義は大きい。本研究の目的は、水中で気体のみを透過する気体透過膜を使ったパッシブサンプラーを用いて、地下水井戸の任意の深さで地下水溶存ガスを観測することである。大分県別府市にある深さ300mの京都大学の試験温泉井戸で昨年度に採取した溶存ガス試料を分析した。サンプラーに水が入っている試料があり、井戸に沈めた時点で気密性が保たれていなかったと考えらえる。希ガスの分析データからは分析までの保管中に空気が入った可能性があることが確認でき、たとえ水の存在がなくても空気の混入を知ることができた。空気が混入したデータを除くと、これまでと同様の傾向を示し、サンプラーは高温高圧に耐え、透過膜によるガス交換も問題なさそうであった。このプロジェクトの期間中、毎年夏に深さの異なるものを複数採取しており、溶存ガスの組成および同位体の空間分布に加えて、それらの経年変化も得られるようになった。特にヘリウム同位体比(3He/4He比)は深さが深くなるほど高くなり、井戸の深部でマグマ由来のヘリウムが供給されていることがわかった。また3He/4He比は20Ne/4He比ときれいな相関があり、溶存ヘリウムがマグマと大気の2成分混合で説明できる。これによりヘリウムのソースとなるマグマの3He/4He比を推定することに成功した。さらにマグマの3He/4He比の時間変化を見ることで火山活動や地震活動をモニタリングするのに使える可能性を示した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件)
Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 317 ページ: 106~117
10.1016/j.gca.2021.10.023
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 12026
10.1038/s41598-021-91523-6
Journal of Oceanography
巻: 77 ページ: 93~101
10.1007/s10872-020-00560-8
地下水学会誌
巻: 63 ページ: 151~157
10.5917/jagh.63.151