研究課題
海洋環境にもたらされる様々な汚染物質は、海水を媒体とし、海洋を拡散する。原子力発電所事故など海洋汚染事故由来の汚染物質は、東シナ海を起点とし対馬暖流とともに日本海を北上した後、オホーツク海、および太平洋に放出される。これら海域における溶存成分の循環に関する情報は、海洋物質動態研究のみならず、人為事故等に関わる海洋汚染に備え非常に重要である。2011 年3 月の福島原子力発電所事故によりCs-134、Cs-137が海洋に放出され、事故以前は検出限界以下であったCs-134が、これら海域において事故後に極微弱ながら検出された。Cs-134濃度は、福島原発をスタート地点とした海水循環を探る極めて重要なトレーサーとなる。令和2年度は、日本列島を取り巻く東シナ海、日本海、オホーツク海といった物質循環の特徴の全く異なる縁海における溶存核種Ra-226、Ra-228、Cs-134、およびCs-137濃度の季節的・空間的に高分解能かつ高精度な空間分布を、低バックグラウンドγ線測定法の適用により求めた。これら溶存放射性核種の時空間的分布を解析することにより、海水循環モデルを構築し、有事の際の溶存汚染物質循環の対策に対応しうるものにまとめた。特に、① Ra-226、Ra-228、およびCs-134からみた日本海南西域における対馬暖流第二分枝の詳細な循環とそれに伴う物質動態、②Cs-134濃度の時空間分布より、黒潮海流に伴う東シナ海を経由した日本海への放射性セシウムの供給メカニズム、および③ Ra-228、Cs-134からみた親潮寒流の循環について明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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