研究課題/領域番号 |
18K11617
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中村 高志 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60538057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 山体地下水 / 甲府盆地 / カトマンズ盆地 / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
本研究では、ネパール・カトマンズ盆地と甲府盆地を比較対象地域に選定して、“山体地下水の広域流動の特性”を水文学と水質学の観点で把握し、地下水流動モデルに応用することで山体地下水の水資源的価値を質と量で評価することである。 本年度は、カトマンズ盆地ならびに甲府盆地において得られた水質および地下水年代データの解析により、山体地下水の寄与が卓越する地下水が分布する地域の把握を行なった。山体地下水の流動域の把握には、地下水の涵養源を把握することのできる水の水素および酸素安定同位体比を用いたが、河川水もまた山地で集水するため、水の水素および酸素安定同位体の情報のみで河川伏流水と山体地下水を分離するのは困難であった。そのため、地下水の水質組成(主要溶存科学成分の構成)や水の水素および酸素から導かれる涵養期を示す指標(d-excess値)の分布を合わせて解析することで、山体地下水の分布の把握に至った。 カトマンズ盆地については、既往の研究によれば山体崩壊により形成された盆地北部の扇状地が主要な地下水の涵養源であると結論づけられていたが、本研究では盆地周辺部の非火山性山体の山麓には山体地下水の寄与を示す結果が得られ、山麓域における山体地下水の寄与が確認された。 甲府盆地では、非火山性山体(櫛形山)東斜面と火山性山体(茅ヶ岳)南斜面に分布する深井戸で入手したデータの比較を行なった。山体の裾野が大きく広がる地形を有する茅ヶ岳南麓においては山体から離れるにつれてローカルな天水の寄与が大きくなり、山体地下水の寄与が小さくなる傾向が顕著にみられた。一方、非火山性山体の櫛形山では山体地下水の寄与が山体から離れた扇状地地域においても確認でき、急峻かつ狭窄した集水域を有する非火山性山体においては山体地下水の寄与が比較的広い地域で卓越することが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、水質および水文データの解析を予定通り実施することができ、山体地下水の寄与が卓越する地域の把握に至った。さらに水質データの解析も予定通り実施することができ、両研究対象地域において共通する傾向を見いだすことができた。地下水流動モデルへ適応については、地質データの入手に時間を要したが、既に広域における地質データの整理にとりかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで得られた山体地下水の分布に関する知見と、地質や水文データを地下水流動モデルに反映させることを試みる。また、これまでに明らかになった研究成果を学会発表等で公開し、他の専門家との議論を積極的に行い、必要に応じで解析の修正等を行う。これらの研究活動は、学部学生ならびに大学院生の研究補助を受けながら推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿時期が次年度になったため、投稿日および英文校正費を次年度に使用することとした。 また、一部のサンプルの分析ならびにデータ解析に必要なソフトは、平成31年度のデータ解析業務が完了した時点で、選定する方が効率的な予算執行ができたため、次年度での予算執行とした。
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