研究実績の概要 |
土壌の炭素蓄積機能にはアルミニウムー腐植複合体(AlーHS)の関与が大きいと考えられているが、その詳細は明らかにされていない。そこで本研究課題は、AlーHSの安定性評価やメカニズムについて検討を行うこととした。 今年度は、一昨年度に行った土壌生息菌の分解作用に対するAl―HSの安定性評価法を利用して、試料数を増大しAlー腐植酸複合体(AlーHA)の分解試験を行った。微生物接種源としては、山口県内の黒ボク土2地点(草地、耕作放棄地)と褐色森林土2地点(林地)の表層5cm深の未風乾土壌を採取して使用した。採取した土壌から作成した土壌懸濁液をAl―HAもしくはHAを添加したパーライト培地(pH4.0, 6.8)に接種し、4,8,12週間培養後、HAの褪色率を測定した。その結果、HA添加区においては、全ての土壌で褪色率は正の値を示し、ほとんどの土壌で培養期間の増大とともにその値は増大する傾向が認められた。これに対して、Al―HA添加区では培養初期に負の褪色率を示し着色化が生じる傾向が示されたが、培養日数の増大に伴い褪色が進行した。いずれにしても、全ての土壌、培養期間、およびpHにおいて、HA添加区の褪色率はAl―HA添加区の値を上回り、土壌生息菌の分解作用に対するHAの安定性はAlとの複合体形成により増大することが示された。ただし、pH変化による褪色率の差異は認められなかったことから、低pH条件下におけるAlイオンの放出による微生物活性の低下が安定化の要因とは考えられなかった。
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