研究課題/領域番号 |
18K11632
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研究機関 | 国土地理院(地理地殻活動研究センター) |
研究代表者 |
松尾 功二 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 主任研究官 (80722800)
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研究分担者 |
大坪 俊通 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70358943)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宇宙測地学 / 重力観測 / Satellite Laser Ranging / 衛星軌道決定 |
研究実績の概要 |
これまでの研究により,LAGEOS-1,LAGEOS-2,Ajisai,Starlette,Stellaの5つのSLR衛星を使用することで地球重力場を次数5まで導出可能であることを確認した.本年度は,新たにLaretsとLARESの2つのSLR衛星を追加することで,地球重力場の決定精度の向上を試みた.これらの衛星は,軌道高度が比較的低く,軌道傾斜角も異なることから,次数2以上の重力場成分の決定精度の向上に期待できる.まずは,地球重力場の次数5次まで推定し,従来のSLR重力解との比較を行った.その結果,LARES衛星の導入によって,特に帯球成分の奇数項(C30項とC50項)の推定誤差の低減が見られ,安定的な解推定が可能となった.GRACE-FO重力解との残差標準偏差は,C30項に関しては1.4×10-10から7.4×10-11に改善し,C50項に関しては1.2×10-10から4.5×10-11に改善した.一方で,Larets衛星の導入による重力解の改善はほとんど見られなかった.その原因としては,(1)Larets衛星の軌道がStella衛星と類似している,(2)Larets衛星の質量が小さく摂動力の影響を受けやすいことから軌道決定精度が悪い,(3)Larets衛星の追尾観測頻度が低い,などが考えられる.地球重力場の決定はGRACE-FO衛星でも行われているが,当衛星は打ち上げ直後に1つの加速度計が故障しており,それに起因してC30項の決定精度が低下しているとの報告がある(Loomis et al., 2020).この問題はGRACE-FO衛星の後継機が打ち上がるまで続くことから,SLRによる地球重力場決定の重要性は今後益々高まるものと推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たなSLR衛星データの追加により,これまで問題となっていた奇数帯球成分の重力項の改善が達成されたが,この重力解を用いた全球質量変化のインバージョン解析が未だ実施できていない.今後,SLR重力解のさらなる改良を進めつつ,全球質量変化のインバージョン解析にも着手していく.
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今後の研究の推進方策 |
これまではSLR解析に標準的な球体型衛星の追尾データを用いて重力場推定を行ってきたが,今後は,非球体型衛星の追尾データも導入して重力場推定を進める.例えば,SARAL衛星などのアルティメトリ衛星は軌道高度が比較的低く,SLR反射レフレクターを搭載していることから,重力場推定に有効な追尾データが得られるものと期待される.非球体型衛星は,衛星に作用する非保存力(太陽輻射圧・地球輻射圧・大気抵抗など)がより複雑になることから,そのモデル化に係る研究も進めていく.新たに推定した重力場解を用いて,全球質量変化のインバージョン解析を行い,大気再解析データや陸水貯留量データといった気候データとも照らし合わせることにより,質量変化の原因となった地球物理現象の解明に挑む.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で、予定していた国内外の学会参加のための費用を使用しなかったことから次年度使用額が生じた。今後の使用計画としては、学会参加費や論文投稿費等を考えている。
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