研究課題/領域番号 |
18K11634
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
天川 裕史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋鉱物資源賦存量調査・分析プロジェクトチーム, 臨時研究補助員 (60260519)
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研究分担者 |
臼井 朗 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任教授 (20356570)
後藤 孝介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30612171)
鈴木 勝彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), センター長 (70251329)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海水 / マンガンクラスト / Nd同位体比 / Pb同位体比 |
研究実績の概要 |
本研究は同一海山の異なる水深から採取したマンガンクラストのネオジム(Nd)同位体比および鉛(Pb)同位体比の時系列データを用い、データの海域依存性を排除した古海洋循環の復元を目的としている。2020年度は拓洋第3海山試料表面のPb同位体比を測定し、拓洋第5海山の表面試料のPb同位体比データとの比較を行った。また、拓洋第5海山の2深度(965mと2987m)から採取されたマンガンクラストのNd同位体比の時系列データの決定も行った。 拓洋第3海山の表面試料のPb同位体比(Pb-206/Pb-204)は18.60 ~ 18.62となり、拓洋第5海山の値(18.65 ~ 18.68)に比べ明らかに低い値となった。北太平洋の様々な海域から採取された試料の報告値は、拓洋第5海山試料の値と類似している。また、花崗岩質以外の日本の標準岩石のPb同位体比は18.60より低い値を示す。一方、アジアの大陸地殻の平均的な化学組成を反映している中国のレスの値は18.7以上である。大陸から離れた北太平洋外洋域では大気経由で運搬されるレスの高い値を反映するのに対して、日本近傍に位置する拓洋第3海山では日本から供給されるローカルなPbの低い値を反映している可能性がある。 拓洋第5海山のNd同位体比の時系列データは網羅する年代幅がいずれも800万年(965m: イプシロン値 = -3.7 ~ -3.2)と1450万年(2987m: イプシロン値 = -3.6 ~ -4.7)と比較的短く、大きな変動は認められなかった。従来研究同様、現代から過去へ向け減少する傾向が認められたが、2987mの試料は1250万年前まで減少した後1450万年の部分で僅かに増加に転じた。同種の傾向は類似した深度から採取された他の北太平洋のマンガンクラストにも認められており、その時代に深層循環の変化があったことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は拓洋第3海山試料表面のPb同位体比分析に加え、拓洋第5海山の異なる4つの深度から採取した試料のNd同位体比の時系列データを決定する予定であった。しかしながら、コロナウイルスの蔓延に伴う出勤制限によって、上述の通りPb同位体比分析については完了したものの、拓洋第5海山の時系列データについては2深度分を決定するにとどまった。残りの2深度分の試料については既に分析に供する溶液の作成は完了しており、2021年度中には十分に分析可能な状況にある。 以上を総合的に判断すると、研究の進捗状況はやや遅れているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
拓洋第5海山の残り2深度のマンガンクラスト試料のNd同位体比の時系列データを決定する。さらには、全ての深度のPb同位体比の時系列データの決定を試みる。そして、こうした時系列データに基づき過去の北太平洋の海洋循環の復元を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延によって生じた実験の遅延により、実験に使用する器具および試薬の購入が出来なかったため。使用計画としては、テフロン容器および高純度塩酸の購入に充てる予定である。
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