研究課題/領域番号 |
18K11637
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
渡部 浩之 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (90608621)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精子の運動パターン / 受精能 / 放射線 |
研究実績の概要 |
新生仔期のマウスにγ線を照射した個体では、性成熟後に体外受精を行ったとき受精率の低下が見られるが、受精卵の染色体には異常が見られないことが分かっている。この受精率低下の原因を特定するために以下の検討を行った。 受精卵を用いた精子染色体異常の評価は、精子のDNA損傷は受精後に卵子内で修復されることから、精子が受けたダメージを過小評価する可能性がある。そこで、γ線照射の有無による精子DNAの損傷度合いを、Comet assayで評価した。その結果、生後4日目に2Gyのγ線を照射した群では、非照射対照と比較して約2倍のDNA損傷が見られた。 また遊泳している精子のイメージシーケンス(120フレーム/秒)を取得し、精子運動パターン(精子頭部の軌道)の解析を実施した。この解析は昨年度実施しているが、今年度は精子個別に詳細な解析を行った。得られたイメージシーケンスから14994個分の精子の頭部軌道を追尾した。1秒間の移動距離から運動精子を抽出し(4638個)、その後の解析に使用した。受精時、精子は卵丘細胞間に存在するヒアルロン酸内を移動する。その環境を模した1%PVP含有培養液中での精子の運動パターンをPVP不含培養液のものと比較した。その結果、非照射対照群では1%PVP含有培養液中の精子の直線速度(VSL)、曲線速度(VCL)、平均速度(VAP)は、PVP不含培養液中精子の69.5%、54.4%、54.9%であった。一方、生後4日目に2Gyのγ線を照射した群では、1%PVP含有培養液中の精子のVSL、VCL、VAPは、PVP不含培養液中精子の78.6%、66.2%、77.5%であった。精子の受精能獲得を誘起するMBCDを培養液中に添加したところ、非照射対照群の精子ではVSL、VCL、VAPが上昇したが、生後4日目に2Gyのγ線を照射した群の精子では、これらの値に変化はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
10μm厚チャンバー内を遊泳している精子のイメージシーケンスから精子尾部の波形解析を試みたが、尾部認識の精度が悪かったため画像解析が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
精子のイメージシーケンス取得方法を改良し、実施できなかった精子尾部の波形解析を行う。 研究代表者の異動によりマウスへのγ線照射が困難になったので、予定を変更して、DNAの切断や炎症を誘起する薬剤(ブレオマイシンやリポ多糖)を投与することで、γ線照射時と同様の状態を作り出し、その後の精子受精能が低下するかを検討する。その他の分析項目は当初の実験計画に従って行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
取得したイメージシーケンスでは精子尾部の認識精度が悪かったという事情から、予定していた実験を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。実施できなかった実験は次年度に実施予定である。
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