研究課題/領域番号 |
18K11640
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田野 恵三 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00183468)
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研究分担者 |
増永 慎一郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (80238914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA損傷修復 / 細胞内微細環境 |
研究実績の概要 |
平成30年度から引き続き、メトフォルミン(Metformin)を含む種々のDNA-タンパククロスリンク(DPCs)誘発薬剤によるDPCsの同定と定量化を行った。実験細胞をトリDT40細胞系からヒトTK6細胞系へと完全に移行し、トリとヒトにおけるDPCs修復機構の違いに着目して解析を進めた。令和元年度は新たに、Dnmt1-DNA トラッピングを誘発すると考えられているアザシチジン(Azacitidine)について、種々の修復遺伝子編集細胞を用いた感受性解析とDPCsの同定および定量を開始した。種々のヒト、トリのDNA修復欠損細胞の解析から、ヒトTK6のSPRN欠損細胞がアザシチジンに対して感受性を示すことを見出した。CsCl遠心により分離精製したゲノムDNAを用いて、アザシチジンにより選択的に誘導されると考えられてきたDnmt1-DNA トラッピングの定量法の確立を目指した。ヒトDnmt1抗体を用いたDNAウエスタン法で解析の系を確立した。これを用いた実験の結果、野生株、TDP1欠損株、 TDP2 欠損株、TDP1・TDP2二重欠損株では、アザシチジン処理後のDnmt1-DNAトラッピングは経時的に除去されていた。一方、SPRTN欠損細胞では、これら3種類の欠損株と比して明らかにDnmt1-DNAトラッピングの除去が遅れており、アザシチジン感受性との相関が認められた。この結果はSPRTNがDPCs修復に関与することの初めての直接的証拠となり得る。令和2年度はさらのSPRTNのタンパク分解酵素としての機能が直接これらの修復に関与するのか、さらにユビキチン化と連動するのかを重点的に解析すると共に、既にSPRTN欠損細胞で感受性を見つけているメトフォルミンについてもDPCs修復との関係を明らかにすることを目的としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dnmt1-DNAトラッピングの定量の系が完成した。またヒト細胞系への移行が連帯研究者笹沼の協力により確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
Dnmt1-DNAトラッピングの除去へのSPRTN遺伝子産物の関与機構をあきらかにする。特にユビキチン化によるタンパク分解能との関係に重点を置く。さらに本来の研究目的であるメトフォルミよるDNA損傷依存的致死作用、特に以前より報告してきたSPRTN欠損細胞でのメトフォルミン感受性機構の解明については、これまでの成果をベースに最終年度の新たな進展を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一連のトリ細胞を用いた実験の成果を論文発表すべく令和元年度の後半に投稿したが、リバイス作業が長引き年度末を迎えることとなった。残額は予想される論文掲載料の予算である。
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