研究課題/領域番号 |
18K11641
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角山 雄一 京都大学, 環境安全保健機構, 助教 (90314260)
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研究分担者 |
堀江 正信 京都大学, 環境安全保健機構, 助教 (60727014)
戸崎 充男 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (70207570)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞照射 / α線 / 高LET放射線 / DNA二本鎖切断 / CR-39 / バイスタンダー効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、生体内局所における内部被ばく影響を細胞スケールで解明し、とくに未知の部分が多いバイスタンダー効果の組織・臓器特異性についてその解析系を確立し、ミクロレベルでの実態を明らかにすることを目指している。 昨年度までに、本研究課題において我々は二次元及び三次元で一細胞に対してヘリウムイオン(α粒子)を照射することが可能な一細胞照射系を開発している。しかし、この照射系の開発において、以下の二点が大きな課題として残っていた。 ① 細胞に照射するイオン数及びエネルギーの評価方法の確立 ② バイスタンダー効果の指標となる細胞レベルでのバイオマーカーの選定 今年度は、これらのうち①に重点をおいて課題の解決を図った。具体的には、照射ターゲット(今年度は細胞の代わりに、照射粒子数の測定が行える固体粒子線検出樹脂CR-39を照射ターゲットとして使用)とPo-210マイクロα線源との間との距離を精密に測定できる機構(NIS-Research制御装置2 等)を一細胞照射システムの顕微鏡に実装し、照射距離の調節を微細に制御できるよう改良した。これにより照射粒子数の制御の精度が飛躍的に高まった。尚、照射粒子のエネルギーについては、実測の代わりにモンテカルロシミュレーション(PHITS)により十分に評価可能であることを昨年度に明らかにしているが、今回の照射距離の測定精度向上により、エネルギー評価の正確性も格段に向上することとなった。 一方、②については適当なマーカーの特定には至っておらず、引き続き解決すべき課題として残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、以下の二点について計画を完遂する必要がある。 (a) バイスタンダー効果を検出するための一細胞照射装置の開発、(b) 装置(a)を用いた細胞照射実験によるバイスタンダー効果の組織特異性の検証。 これらのうち、(a)については、以下の通り、概ね順調に研究が進んでいる。 ① 二次元での一細胞照射における照射粒子数及び照射エネルギー評価方法の確立: 粒子数の測定については、今年度の大幅な装置改良により制度が格段に向上した。また、エネルギー評価については昨年度にPHITSによる計算で代用できることを示した。 ② 三次元一細胞照射系の開発: 昨年度までに三次元照射に要する装置基幹部分の開発を完了しており、今年度さらにこれに改良を加えた。 しかしながら、(b)については組織特異性の判別に十分用いることができるようなバイオマーカーの特定には至っていない。マーカー選定作業の充実を図る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画のうち、装置開発に関する部分については、照射粒子及びエネルギー評価方法が確立し、さらには三次元照射系の装置基幹部分が完成するなど、概ね順調に研究が進んできたので、次年度以降は残る最大の課題であるバイオマーカーの選定に集中して課題の解決を図ることとする。 バイオマーカーの選定に関しては、これまでにDNA二本鎖切断修復関連の蛋白質などを中心に試行してきたが、今後はアポトーシス関連の因子なども候補とし、本研究課題の目的に叶うマーカーを選定する。また、マーカー選定が完了次第、バイスタンダー効果における組織特異性について実験を開始する予定である。
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