研究課題/領域番号 |
18K11642
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
石合 正道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 施設長 (90298844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA損傷応答 / DNA修復 / フォーカス形成 / ATRIP / ATR |
研究実績の概要 |
放射線等により生じるゲノム損傷は生体にとり有害であるため、生体にはその防御機構としてDNA損傷応答機構(DDR)が存在する。その中心分子はATMとATRキナーゼであるが、本課題ではATRに注目した。 DNA損傷によりDDR因子やDNA修復因子がDNA損傷部位に集積し、細胞核にドット状に観察されることが知られている。これを(核内)フォーカスと呼ぶ。ATRはATRIPと複合体を形成し、DNA複製ストレスで活性化され、これまでに少なくとも2つの活性化機構が知られている。 研究代表者はATR-ATRIPの活性化機構が他にも存在するのではないかと考え、新たなATR-ATRIP活性化を解析する目的で、ATRIP-GFPを安定に発現するヒトA549細胞(ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞)を用い、DNA複製ストレス下でのATR-ATRIP活性化の検出系を構築した。具体的には、複製ストレス条件下で、ATR-ATRIP活性化をATRIP-GFPのフォーカスとして、複製ストレスの初期反応を反映する1本鎖DNAの生成をその部位に結合するRPAフォーカスとして検出する系を構築した。この系を用い、複製ストレスを与える抗がん剤処理でsiRNAライブラリースクリーニングによって、ATRIP, RPAそれぞれのフォーカス形成効率に影響する候補分子を探索した。 1次スクリーニングとしてマイトマイシンC(MMC)24時間処理、2次スクリーニングとしてヒドロキシウレア(HU)2時間処理にて、検討を行い22個の候補分子に絞り込んだ。 これらの候補分子について、発現プラスミドを構築し、発現細胞での検討を行っている。目的の候補分子はATRIP、RPAの動態と一致することが予測されるが、予測する表現型を示す候補分子に行きついておらず、さらに検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次スクリーニングで絞り込んだ候補分子について、個別の解析を行うためcDNAを入手し、タグ付きの発現プラスミドを構築している。また、siRNAや抗体などの実験材料の入手を適宜すすめている。 発現プラスミドの構築が完了したものから発現細胞での検討を行っている。複製ストレス下での細胞内局在やフォーカス形成、ATRP-GFPならびにRPAとの共局在を検討する。目的の候補分子はATRIPあるいはRPAと動態が一致することが予想されるが、予測する表現型を示す候補分子に行きついておらず、未検討の候補分子に対する検討を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
1)候補分子の発現プラスミドの構築と細胞内局在、相互作用の検討。 候補分子について、個別にcDNAを入手しタグ付きの発現プラスミドを構築し、発現細胞における複製ストレス下での細胞内局在やフォーカス形成、ATRIP-GFPならびにRPAとの共局在を検討する。
2)候補分子のノックダウン・ノックアウト細胞の樹立と表現型解析。 個別の候補分子に対し、siRNAを用いたノックダウン細胞やCRISPR/Cas9システムによるノックアウト細胞を構築する。樹立した細胞株を用い、DNA損傷応答やDNA修復の表現型解析を行う。まず、様々なDNAダメージに対する感受性試験を行い、どのようなDNAダメージに感受性を示すかその傾向を把握する。ノックダウンの方がノックアウトよりも時間的に早く結果が得られることが期待されるため、ノックダウン細胞での検討を優先する。 現時点では1)の段階にとどまっており、2)の検討を始められていない。期待される候補分子が得られれば、さらにダブルノックダウン・ダブルノックアウト細胞を構築し、遺伝学的検討により、既存のDDRやDNA修復経路との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由。研究は順調に推移しているが、2020年1-3月のコロナウイルス禍による影響等により研究材料の取得、調達等の遅延、実験制限・自粛等の影響により、結果的に研究費に余裕が生じた。
使用計画。主に消耗品に使用する。
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