研究課題
DNAが損傷されてもDNA複製を継続させて細胞の増殖を維持する機構が、損傷トレランスである。ユビキチンライゲースであるRad18は、損傷トレランスを実行する。その一方で、Rad18は発がんを促進する性質をもつことがわかった。例として、Rad18タンパクは、がんの増殖のマーカーであるMAGE-A4により安定化され、発がんを促進する性質をもつと提唱したことが挙げられる。Rad18が、がんの増殖を促進するメカニズムを明らかにすることが、本研究の目的である。野生型マウス細胞またはRad18欠損マウス細胞に対して、UVを照射した後の分裂期細胞死頻度を測定した。Rad18欠損細胞で高い分裂期細胞死が見られる傾向があった。しかし照射量により結果にばらつきが見られるため、まだ慎重な経過観察が必要である。また、Rad18欠損による分裂期細胞死の亢進に伴って、ヒストン修飾について特徴的なエピジェネティクな変化が見られた。また分裂期細胞死を誘導するエフェクター因子の転写量について、野生型細胞に比べてRad18欠損細胞では、UV照射後に高い値が見られた。現在、Rad18によるPCNAのモノユビキチン化が、どのようにしてエピジェネティクな変化に影響を及ぼしているのか調査中である。細胞に対して、モノユビキチン化を受けない変異PCNAタンパクを発現させたり、ユビキチン化PCNAからユビキチン分子を脱離させる酵素であるUSP1などに対する、shRNA処理を行うことで、その影響を見る計画を立てている。
2: おおむね順調に進展している
Rad18欠損細胞で高い分裂期細胞死の傾向が確認できたこと。またRad18の機能と相関して、ヒストン修飾について特徴的なエピジェネティクな変化が見られたため。
分裂期細胞死を誘導する他の因子についても調査を行う。 細胞を過酸化水素を用いて処理する。または細胞に放射線を照射してから、分裂期細胞死を評価する。またRad18によるPCNAのモノユビキチン化が、どのようにしてエピジェネティクな変化を誘導するのか、仮説を立てて検証する。また、Rad18欠損による分裂期細胞死の亢進に伴って、ヒストンの修飾について特徴的なエピジェネティクな変化が見られたので、これを確認する作業を行う。さらにヒストンの修飾について、特異的抗体を用いてRad18特異的な変化が見られるか、解析する。また分裂期細胞死を誘導するエフェクター因子の転写量について、野生型細胞に比べてRad18欠損細胞では、UV照射後に高い値が見られた。さらにタンパク量についてもウエスタン解析により調べる予定である。野生型細胞とRad18欠損細胞を比較すると、ヒストン修飾酵素の安定度に違いが見られた。現在、Rad18によるPCNAのモノユビキチン化が、どのようにしてエピジェネティクな変化に影響を及ぼしているのか調査中である。細胞に対して、モノユビキチン化を受けない変異PCNAタンパクを発現させたり、ユビキチン化PCNAからユビキチン分子を脱離させる酵素であるUSP1などに対する、shRNA処理を行うことで、その影響を見る計画を立てている。
使用している細胞に問題が発生したため、計画していた物品を購入しなかったため、残金が発生した。この金額については次年度にすみやかに使用する予定である。
損傷修復分野 発生医学研究所 熊本大学
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/department_of_cell_maintenance/