研究課題/領域番号 |
18K11646
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
立石 智 熊本大学, 発生医学研究所, 講師 (00227109)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 損傷トレランス / RAD18 / 発癌 / ヒストン / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
細胞に対して、UV照射または抗癌剤を投与するとDNAは損傷されてDNA複製が停止する。細胞は、未修復の損傷を含むDNAの複製を開始する(損傷トレランス)。E3酵素であるRAD18がPCNAをユビキチン化して損傷乗越え複製を促進することで損傷トレランスを実行する。RAD18欠損マウスは、精巣、皮膚、造血組織などで早期老化の傾向が見られた。その一方で、癌抗原MAGEA4はRAD18タンパクを安定化することにより、発癌を促進することを提唱した。損傷乗越え複製以外の機構により、RAD18が正常組織または癌組織の細胞の増殖を促進する機構の解明をめざしている。RAD18欠損マウス細胞は、正常細胞に比べて細胞老化が促進していることがわかった。UVを照射すると、さらに細胞老化が亢進した。本研究所の中尾らは、ヒストンメチル化酵素SETD8が細胞老化を抑制することを報告した。また、最近RAD18タンパクが、ヒストンメチル化酵素SETD1Aと結合して制御することが報告された。我々は、RAD18タンパクと種々のヒストンメチル化酵素との結合を調べた。その結果、RAD18は一部のヒストンメチル化酵素と結合していることがわかった。またRAD18欠損細胞で、そのヒストンメチル化酵素発現量が約40%減少していた。UV照射などによるDNA損傷に応答して、そのヒストンメチル化酵素量が変化するか解析する予定である。またRAD18が細胞増殖を促進する機構の解明を目的として、RAD18欠損細胞での遺伝子発現プロファイル解析を行うことにより、どのような遺伝子発現調節機構があるのか明らかにする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞に対して、UV照射または抗癌剤を投与するとDNAは損傷されてDNA複製が停止する。細胞では損傷を修復するが、その一方で損傷されたDNAの複製を開始する(損傷トレランス)。その機構として、E3酵素であるRAD18がPCNAをユビキチン化して損傷乗越え複製を行う。RAD18欠損マウスは、精巣、皮膚、造血組織などで早期老化の傾向が見られた。また、発癌組織で癌抗原MAGEA4は、RAD18タンパクを安定化することにより発癌を促進することを提唱した。損傷乗越え複製以外の機構により、RAD18が正常組織または癌組織の細胞の増殖を促進する機構の解明をめざしている。RAD18欠損マウス細胞は、正常細胞に比べて細胞老化が促進していることがわかった。UVを照射すると、さらに細胞老化が亢進した。本研究所の中尾らは、ヒストンメチル化酵素SETD8が細胞老化を抑制することを報告した。また、最近RAD18タンパクが、ヒストンメチル化酵素SETD1Aと結合して制御することが報告された。我々は、RAD18タンパクと種々のヒストンメチル化酵素との結合を調べた。その結果、RAD18は一部のヒストンメチル化酵素と結合していることがわかった。また、RAD18欠損マウス細胞およびヒト細胞で、そのヒストンメチル化酵素発現量が約40%減少していた。正常細胞とRAD18欠損細胞を使用して、通常の培養条件とDNA損傷処理をした細胞群を用いて、次世代シーケンサーによる遺伝子発現解析を行った結果、4種の細胞で遺伝子発現に関して明確な特徴があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、RAD18タンパクと種々のヒストンメチル化酵素との結合を調べた。その結果、RAD18は一部のヒストンメチル化酵素と結合していることがわかった。また、RAD18欠損マウス細胞およびヒト細胞で、そのヒストンメチル化酵素発現量が約40%減少していた。また、RAD18欠損マウス細胞およびヒト細胞で、そのヒストンメチル化酵素発現量が約40%減少していた。正常細胞とRAD18欠損細胞を使用して、通常の培養条件とDNA損傷処理をした細胞群を用いて、次世代シーケンサーによる遺伝子発現解析を行った結果、4種の細胞で遺伝子発現に関して明確な特徴があることがわかった。今後はこの特徴に着目し、RAD18の発現量の増加に伴って、ヒストンメチル化が亢進して細胞増殖が促進される機構のモデルを提案するとともに、これを明らかにする。またRAD18は、レトロウイルス、アデノウイルスなど広範なウイルスによる感染を防ぐことを報告した。今後は海外、国内の共同研究者と連携し、RAD18によるヒストンメチル化制御がウイルス感染防御に果たす役割を解明することもめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ疾患に対する自粛活動の準備などで、実験計画に比べて実際の使用金額が少なくなったため
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