研究課題
本研究の最終目的は、環境中の毒性化合物である不飽和カルボニル化合物が、どのようにして細胞傷害を引き起こし、疾病につながっているかを解明することである。これまでの研究により、不飽和カルボニル化合物による細胞傷害にはプロテインキナーゼCが深く関与することが分かっていることから、本研究計画ではプロテインキナーゼCに着目して研究を進めることとした。プロテインキナーゼCには10種類のアイソザイムが存在するが、これらのアイソザイムのうち、どのアイソザイムが不飽和カルボニル化合物による細胞傷害に関与するかは不明であった。そこで、2019年度には不飽和カルボニル化合物による細胞傷害に関与するプロテインキナーゼCアイソザイムの特定を目的としたプロテインキナーゼCノックダウン系の立ち上げとノックダウンに伴う表現型の解析を試みた。その結果、ラット血管平滑筋培養細胞であるA7r5細胞に発現するプロテインキナーゼCのうち、レンチウイルスベクターを用いたshRNA発現系により、alphaおよびdeltaのノックダウンに成功した。ノックダウン細胞の不飽和カルボニル化合物感受性について検討を行ったところ、この2種類のプロテインキナーゼCのノックダウンは、ラットグリオーマ由来培養細胞やラット血管平滑筋培養細胞における不飽和カルボニル化合物の感受性には影響を及ぼさないことが分かった。これらの結果は、不飽和カルボニル化合物はalphaおよびdelta以外のプロテインキナーゼCアイソザイムを介して細胞傷害を引き起こしていることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
2019年度には、ラット平滑筋細胞におけるプロテインキナーゼCの幾つかのアイソザイムのノックダウン系の確立を進め、今後の表現型解析への道筋をつける目途がたったことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
2020年度には、ラット平滑筋細胞に発現するすべてのPKCのノックダウン系を確立し、その表現型解析を行うことで、不飽和カルボニル化合物による細胞傷害に関与するプロテインキナーゼCアイソザイムの特定を試みると共に、その下流のシグナル伝達経路の探索を行うことで、不飽和カルボニル化合物による細胞傷害におけるプロテインキナーゼCの役割を明らかにすることを目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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