研究課題/領域番号 |
18K11655
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長江 真樹 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00315227)
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研究分担者 |
高尾 雄二 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (20206709)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミナミメダカ / 二次性徴 / 環境ホルモン / 女性ホルモン |
研究実績の概要 |
平成30年度では、以下の2つの曝露試験を実施し、ミナミメダカ臀鰭鰭条の先端分枝が女性ホルモンにより形成誘導されることを示した。
【試験1】二次性徴発現前の孵化後4~5週のミナミメダカに対し、女性ホルモン(17β-エストラジオール,E2)を20,50および200pptの濃度で流水曝露により8週間曝露し、鰭条先端分枝形成と曝露したE2濃度の関係を明らかにした。その結果、E2を曝露された遺伝的雄における臀鰭鰭条の先端分枝数は、E2濃度依存的に増加し、最高濃度区である200pptでは、通常の遺伝的雌の成熟個体が持つ分枝形成数と同程度であった。また、E2を曝露された遺伝的雄における臀鰭鰭条の乳頭状小突起数は、E2濃度依存的に減少した。 【試験2】受精直後の卵にE2を100および500pptの濃度で4週間流水曝露し、その後は二次性徴発現が完了する孵化後12週齢まで通常飼育水で飼育し、臀鰭鰭条先端の分枝数をカウントした。その結果、E2 500pptで曝露した遺伝的雄は機能的雌に性分化・成熟し、臀鰭の先端分枝数は対象群である通常雄に比べて有意に高い値を示し、その数は通常の遺伝的雌の成熟個体が持つ分枝形成数と同程度であった。
以上の結果から、ミナミメダカ臀鰭鰭条の先端分枝形成が女性ホルモン誘導性であることが示唆された。また、臀鰭における雌雄の二次性徴形質である乳頭状小突起と鰭条先端分枝の形成は、それぞれ男性ホルモンおよび女性ホルモン誘導性であるが、両ホルモンが混在する場合には拮抗的に作用することが示唆された。この拮抗作用が、性ホルモンによる直接的な作用によるものか、脳下垂体など上位のホルモン(生殖腺刺激ホルモンなど)へのフィードバック作用を介した間接的な作用によるものかは現時点では不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に計画していた「曝露試験によるミナミメダカ臀鰭の鰭条先端分枝形成の女性ホルモン誘導性検証」に関する2種類の曝露試験の実施を完了し、本形質の形成が女性ホルモン誘導性であることを明らかにできたことから、本計画は順調に進展していると評価された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り、以下の2点について研究を推進する。 【臀鰭鰭条先端分枝形成の関連遺伝子のクローニング】 鰭条先端分岐形成時に特異的に発現する、若しくは発現量が著しく変化する遺伝子群の探索を行い、分枝形成の分子メカニズムへの理解を進める。 【臀鰭上の性特異的形質を用いた化学物質の性ホルモン作用検出法開発のための検討】 今年度の研究結果から、臀鰭鰭条の先端分枝が、女性ホルモンによって形成誘導されることを明らかにした。今後は、本形質をバイオマーカーに用いた、化学物質の女性ホルモン作用を評価可能な in vivo 試験法開発の検討に着手する。
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