平成30年度において、二次性徴発現前の孵化後4週から5週のミナミメダカ(Oryzias latipes)に種々の濃度で女性ホルモン(E2)を曝露した結果、E2濃度依存的に遺伝的雄個体での臀鰭鰭条先端分枝形成数が増加したことを明らかにし、本バイオマーカーの定量的有効性を示した。
上記結果を受けて昨年度(令和元年度)には、メダカを用いた既存のOECD試験法(OECD TG234 Fish Sexual Development Test)に準じて、受精卵から10週間、異なる濃度のE2を曝露し、曝露したE2の濃度依存的に臀鰭鰭条先端分枝数の増加が認められ、OECDTG234の試験条件、特に10週間の曝露期間が本バイオマーカーの検出に十分有効であることを示した。低濃度のE2あるいは微弱な女性ホルモン活性を検出する場合には、10週間の曝露期間が有効であると判断されるが、ある程度高い女性ホルモン活性を検出する目的であれば、曝露期間を2週間程度短縮し、8週間の曝露期間でも十分であることも示唆された。
今年度(令和2年度)では、本バイオマーカーである鰭条分枝の形成進行を5段階に分類する「分枝スコア」を導入することで、定量性の改良・向上を検討した。その結果、分枝スコアの導入により、それまでは「分枝形成数」のみでの女性ホルモン作用評価に留まっていたが、より定量性の高い数的評価が可能となり、女性ホルモン作用強度の多少について、詳細な比較・差別化が可能となった。前年度(令和元年度)から継続して実施していた「分枝形成関連遺伝子」の探索については、サブトラクション法の導入なども試みたが、分枝形成と深く関連すると思われる遺伝子の検出には至っていない。
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