研究課題/領域番号 |
18K11656
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
八木 孝司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80182301)
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研究分担者 |
川西 優喜 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70332963)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 突然変異 / ゲノム編集 / 損傷乗り越えDNAポリメラーゼ |
研究実績の概要 |
令和元年度は、3-ニトロベンズアントロン (3-NBA)、紫外線(UV-C)、シスプチンが形成するDNA 損傷による突然変異誘発において、種々のTLSポリメラーゼの役割を調べることを目的とした。ヌクレオチド除去修復欠損細胞であるA群色素性乾皮症細胞XP2OS(SV)からCRISPR/Cas9 法によって平成30年度に作製したTLSポリメラーゼ欠損細胞株 (ΔPolη、Δ Polκ/PIP、ΔPolι) を用いた。これらの細胞ではDNA損傷の修復が行われないため、TLS 様式をより詳細に解析することができる。方法は、各細胞に各変異原処理したSupFシャトルベクターを導入し、supF遺伝子に誘発される突然変異の頻度と種類を解析した。 UV-C 損傷が誘発する突然変異は、ΔPolκ株において他の細胞株より突然変異頻度が有意に増加した。すなわち PolκがUV-C損傷のerror-freeなTLSに関与していることが示唆された。また、全ての細胞株においてG:C→A:Tが大部分を占めていた。ΔPolη株でこの置換の割合が減少したことから、Polηがこの置換の誘発に寄与している可能性が示唆された。 シスプラチン損傷では、ΔPolη株において突然変異頻度が有意に増加したため、Polηがerror-freeなTLSに寄与していることが示唆された。また、全ての細胞株において、最も主要な突然変異はG:C→T:Aが大部分を占めていた。 3-NBA 損傷については、ΔPolιにおいて突然変異頻度が有意に減少し、Polιはerror-proneなTLSに寄与していることが示唆された。ΔPolιでは塩基置換の種類に変化が見られなかったが、フレームシフト変異の割合が増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度交付申請書記載のとおり進捗している。3-ニトロベンズアントロン (3-NBA)、紫外線(UV-C)、シスプチンをSupFを突然変異標的とするシャトルベクタープラスミドに処理し、平成30度に作製した各TLS polymerase (Pol η、ι、κ、ζ)を欠損したXP-A細胞で生じた突然変異率、突然変異の種類を細胞間で比較できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度作製した各TLSポリメラーゼ(Pol η、ι、κ、ζ)を欠損したXP-A細胞の3-ニトロベンズアントロン (3-NBA)、紫外線(UV-C)、シスプチンに対する感受性を調べる。またこれら変異原によるDNA損傷を1つだけ付加したLacZ遺伝子シャトルベクターを作製して各細胞に導入し、突然変異誘発に対するより詳細な各TLSポリメラーゼの寄与を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたデータ整理や恒常的実験業務を学生と共に自ら行い人件費・謝金を使用せず、代わりに測定業務委託や英文校正、学会参加費等のその他費を多く使用した。バランスよく支出したつもりだったが、結果的に物品費の支出が抑制され、繰り越し金が生じた。次年度解消する予定である。
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