研究課題
アレルギー感作性の評価の動物実験代替法の汎用性を考えると、プライマリーDCの代わりに株化したDCを用いる可能性を検討する必要がある。これまでに、株化したDCの良い細胞株は知られていない。そこで、今年度は、ヒトiPS細胞からDC前駆細胞を調製することを試みた。方法としては、いくつか報告が既にあるので、その内のフィーダー細胞フリーでサイトカインで分化誘導する方法と、ストローマ細胞(C3H10T1/2)を用いて分化誘導する方法で検討した。その結果、どちらの方法でも、途中に血液細胞が産生される塊iPS-Sacの形成を介して、血液細胞が分化誘導された。そこで、次に、このiPS-Sac由来の血液細胞をそのまま、さらにCD34+細胞に精製して、c-MYCやBMI1、BCL-XLなどの細胞 周期・生存・死に関する分子をGFPとバイシストニックに発現するレンチウイルスを感染させた後、GM-CSFとSCFで培養を続けた。その結果、GFP陽性の増え続ける細胞が、得られることがわかった。まず、前者の方法でiPS-Sac由来の血液細胞をそのまま感染させた場合、GFP陽性細胞が直ぐに得られ、強い増殖性を有していたが、DCへの分化誘導能は低かった。一方、後者の方法で、iPS-Sac由来の精製したCD34+血液細胞を感染させると、徐々にGFP陽性の細胞の割合が増していき、この細胞はDCへの分化誘導能が高かった。実際に、3次元DC共培養系に用いると、代表的な感作性化学物質による刺激で、成熟化のマーカーであるCD86やCD80の共刺激分子の発現の増強や、Th2分化に重要なOX40L発現の選択的増強に見られる傾向にあった。ところが、細胞の継代の途中で急に増殖性が悪くなってしまった。現在、さらに、安定した増殖性の高い不死化したiPS細胞由来DC前駆細胞を作製する条件検討を続けている。
2: おおむね順調に進展している
安定した不死化したiPS細胞由来DC前駆細胞の作製は、未だ完成しておらずさらに現在検討中ではあるが、一般的に細胞株の樹立には時間がかかるため、想定の範囲内と言って良いと思う。
今後の研究推進の方策として、(1) 安定した細胞株の樹立には、時間がかかるため、平成30年度の増殖性の高い不死化したiPS細胞由来DC前駆細胞を作製する条件検討をさらに続ける。それと、(2) 3次元DC共培養系にCD4+T細胞も加えた3次元DC/T共培養系が確立できないかを、まず、プライマリーのヒト末梢血単球由来DCとCD4+T細胞を用いて検討する。(1)不死化の方法として、平成30年度までのc-MYC単独、c-MYC/BMI1、および3者の組み合わせに他に、不死化細胞の作製に汎用される不死化能力の高いヒトテロメア逆転写酵素hTERTの遺伝子をGFPとバイシストニックに発現したレトロウイルスも用いて検討する。既報では、c-MYCだけでも不死化細胞が作製できるとか、c-MYC/BMI1/BCL-XLではあるところで失速するとか、iPS細胞の種類により血液細胞になりやすい細胞とそうでない細胞があるとかあるので、これらについても検討する。(2)T細胞を用いた場合、アレルギーの感作性を調べる一番良いマーカーは、Th2分化の強力な分化誘導因子で、Th2細胞のエフェクターサイトカインでもあるIL-4である。そこで、DC系にさらにCD4+T細胞も加えた3次元DC/T共培養系を確立し、IL-4発現を指標に皮膚と呼吸器感作性の識別が可能か検討する。3次元DC共培養系では、刺激後24時間後にはDCの他の層への移動は殆ど見られなかったことより、DC層だけを外し、その上に新たにヒト末梢血由来ナイーブCD4+T細胞を加え、さらに2、5、7日後にリアルタイムRT-PCR解析を行う。用いるCD4+T細胞としては、アロジェニックとシンジェニックの場合が考えられるが、シンジェニックの場合は、アロジェニックな場合に比べ反応性が1/103~1/104に落ちるので、再刺激の必要性も含め、どちらのT細胞が良いか比較検討する。
端数をピッタリ合わすことが難しいため、次年度使用額が生じた。次年度請求額と合わせて、消耗品の購入に充てる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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