研究課題
今年度は、昨年から引き続き(1)iPS細胞からDC細胞株の作製と、(2)ヒト末梢血由来プライマリー細胞を用いた3次元DC/T共培養系の構築を試みた。(1) iPS細胞からDC細胞株の作製:結局、色々な条件で検討した結果、iPS細胞からストローマ細胞を使ってDC前駆細胞に分化誘導する系でも、ストローマ細胞無しでサイトカインだけで分化誘導する系でも、どちらでもDC前駆細胞様の細胞ができることがわかり、その途中のiPS-Sacや血球系に分化する直前に、c-MYCやBMI1、BCL-2を遺伝子導入すると導入すると増殖してくる細胞が得られることも分かった。その中には、LPSで刺激すると、成熟化する細胞も見られたので、現在さらに、増えてきた個々の細胞株について、そのCD86やMHCクラスII発現増強を調べている。(2)ヒト末梢血由来プライマリー細胞を用いた3次元DC/T共培養系の構築:我々が以前に開発した3次元DC共培養系では刺激24時間後に免疫組織学解析により、DCが他のScaffoldへ移動することは殆ど見られなかった。そこで、代表的な呼吸器および皮膚感作性化学物質としてOrtho-phthaldialdehyde(OPA)とOxazolone(OXA)を用いて刺激後、DCのScaffoldだけを新しいウェルに装着し、その上にさらにアロ反応性の末梢血由来ナイーブCD4+T細胞を加え反応させた。その結果、T細胞を反応させて2日後には、リアルタイムRT-PCR解析により、T細胞の活性化マーカーCD69やTh1分化マーカーIFN-gのmRNAレベルの発現増強が見られ、OXAはIFN-g発現をさらに増強した。一方、OPAは、5日後にIL-4発現を増強する傾向があることがわかり、この系でT細胞を指標に感作性の識別が可能である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
安定したDC前駆細胞株の作製には,ある程度の培養時間が必要であるが、なんとか有望な細胞株が作製できればと考えている。
今後の研究推進の方策としては、今年度に引き続き、(1)iPS細胞からDC細胞株の作製とその機能の評価、(2)ヒト末梢血由来プライマリー細胞を用いた3次元DC/T共培養系の構築を試みる。(1) iPS細胞からDC細胞株の作製:これまでに、複数のDC前駆細胞株様の細胞が得られており、その中には、GM-CSFなどのサイトカインで維持できそうな細胞もあり、それらの細胞株の機能とその機能発現の安定性等、特にLPS等の刺激による成熟化によるT細胞の活性化に重要な共刺激分子CD86/80の発現増強や、TSLP刺激によりOX40L発現増強が一番綺麗に強く見られる細胞を選ぶ。次に、プライマリーDCと同様に3次元DC共培養系にこのDC前駆細胞株由来の未成熟DCを用いて、呼吸器感作性化学物質の刺激で皮膚感作性化学物質に比べ、OX40L発現増強がより強く見られる細胞株を選ぶ。(2)ヒト末梢血由来プライマリー細胞を用いた3次元DC/T共培養系の構築:引き続き、代表的な呼吸器および皮膚感作性化学物質としてOrtho-phthaldialdehyde(OPA)とOxazolone(OXA)を用いて3次元DC/T共培養系の条件検討として、細胞数や反応時間などについて詳細に行い、まず、これらOPAとOXAの刺激で、IL-4発現増強が有意に差が出る条件を見出す。次に、さらに、2つずつの代表的な呼吸器(Hexamethylene-1,6-diisocyanateとTrimellitic anhydride)と皮膚(p-Phenylenediamineと2,4-Dinitrochlorobenzene)感作性化学物質を用いて、これらの感作性化学物質でも両者の識別が可能か検討し、この3次元DC/T共培養系の有効性を明らかにする。
端数をピッタリ合わすことが難しいため、次年度使用額が生じた。次年度請求額と合わせて、消耗品の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
iScience
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10.1016/j.isci.2019.05.011.
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