研究課題/領域番号 |
18K11659
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
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研究分担者 |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨染色 / 免疫染色 / 組織透明化 / マウス / 3D画像解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年、我々が考案した小型魚類及びアフリカツメガエルの迅速骨染色法(RAP-B)のマウス・ラット用に最適化すること、およびRAP-Bで用いた迅速組織透明化法を免疫染色等の組織化学的解析に応用し、骨染色と免疫染色などの多重染色法を開発することを目的としている。 初年度(平成30年度)は、RAP-Bによる骨染色の手順をマウス・ラット胎児用に最適化するための検討、および、出生後から成獣齢のマウスで骨染色を行うための除毛法を考案し、RAP-Bと組み合わせた骨染色法の開発を行った。2年目である平成31年度(令和元年度)は、RAP-Bに用いた迅速組織透明化(RAP)法の免疫染色への応用を試みた。この予備的検討は初年度にすでに開始していたが、RAPを用いた免疫染色手順の確立、および検出可能な抗原や使用可能な抗体等、細かな解析を実施した。その結果、従来のWhole mount免疫染色法では明瞭な染色像を得ることができなかった胎生11日齢以降のマウスにおける抗ニューロフィラメント抗体を用いた免疫染色において、頭部の脳神経(三叉神経や滑車神経など)および脊髄神経といった末梢神経線維が明瞭に描出できた。また、厚切り脳スライス標本を用いた蛍光免疫染色では、蛍光シグナルが全層にわたって検出され、3D画像の再現が可能であった。また、これまで考案された各種の組織透明化法では、一次抗体のhost動物や抗原の種類によっては利用・検出ができない場合があるが、RAPを用いた免疫染色では、細胞骨格、転写因子、カルシウム結合蛋白質など多様な抗原の検出が可能であり、一次抗体のhost動物としてはマウスおよびウサギの両方が利用可能であった。以上より、RAPは免疫組織化学的解析において極めて汎用性の高い組織透明化法であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)迅速骨染色法(RAP-B)のマウス・ラットへの応用、(2)RAP-Bを基にした骨染色-免疫染色の多重染色法の確立、および(3)本研究で確立した手法を毒性試験や発達異常のスクリーニング試験として実用化するための検討、の3つを研究目的としており、年度毎に1つの研究的を達成していくことを目標として取り組んでいる。初年度(平成30年度)は、予定通り、(1)について取り組み、マウス・ラット胎児用にRAP-Bの手順の最適化を行い、さらに成獣マウスで骨染色を行うための除毛法の開発も行ってRAP-B法のマウス・ラットへの応用法をさらに充実させることができた。2年目となる令和元年度は、主に(2)の達成を目標としていたが、すでに初年度から透明化固定液と透明化促進液を用いた組織透明化手順の免疫染色への応用についての取り組みを開始しており、令和2年度はこの免疫染色手順の条件検討をより詳細に検討した。その結果、従来法では得ることができなかった標本(胎生11日齢以降でのWhole mount標本や厚切り組織スライス標本など)を用いた免疫染色においての明瞭なシグナルの描出が可能であること、また、本法が、細胞骨格、転写因子、カルシウム結合蛋白質など多様な抗原の検出が可能であり、一次抗体のhost動物としてはマウスおよびウサギの両方が利用可能であることを明らかにした。さらに最終年度に実施を予定していたモデル動物の解析を前倒しで開始しており、最終年度中に(3)の目標も達成できる見込みである。よって本研究の進捗状況は極めて順調であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和2年度は、本研究により開発した方法で、形態的な異常の描出を行い、毒性試験や発達異常のスクリーニング試験として実用化するための検討を行う。RAP-Bによる骨染色と免疫染色を組み合わせた多重染色法の開発を行う。まず、成獣マウスの全身骨格標本が迅速かつ非破壊的に作成できることを生かし、関節炎モデルマウス四肢の骨格の観察、および肋骨や椎骨の骨格異常と脊髄神経の走行異常を併発する胎生期バルプロ酸暴露モデルマウスを用いて、骨格と脊髄神経の多重染色を行い、毒性試験や発達異常スクリーニング試験として実用化するための検証を行う。また、本研究の研究成果を学会で発表し、また国際専門誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度内に納品を希望していた試薬・器具等の納品が遅れることが予想されたため、一部の物品費を次年度使用とした。次年度使用とした予算については、当初予定していた試薬・器具を購入するため、次年度初頭に速やかに執行する。
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