研究課題
本研究は、近年、我々が考案した小型魚類及びアフリカツメガエルの迅速骨染色法(RAP-B)をマウス・ラットの胎児および成獣用に最適化すること、また、RAP-Bで用いた迅速組織透明化法(RAP)を免疫染色等の組織化学的解析に応用し、骨染色と免疫染色などの多重染色法を開発することを目的として実施された。初年度は、RAP-Bによる骨染色の手順をマウス・ラット胎児用に最適化するための検討、および、出生後から成獣齢のマウスで骨染色を行うための除毛法を考案し、RAP-Bと組み合わせた骨染色法(RAP-B/HR)の開発を行った。2年目は、RAPによる組織透明化の免疫染色への応用を試みた。3年目である令和2年度は、RAP法の免疫染色への応用についてさらに詳細な検討を行うとともに、RAP-B/HRの手法でコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルマウスの骨染色標本を作製し、骨病変の描出を試みた。その結果、RAPで透明化した組織標本を用いた免疫組織学的解析が、これまでよりも発達段階が進んだマウス胎児(E12以降)でも有用であること、および抗原タンパク質が細胞膜蛋白質の場合でも可能であることが示唆された。また、RAP-B/HRでCIAマウスの骨染色標本を作製し、蛍光ズーム顕微鏡にて観察したところ、骨の融合や関節裂隙の狭小化、骨糜爛や骨棘など微細な骨病変が描出でき、手根部や中手指節関節背側部では微小な遊離骨(68~95μm)が複数確認された。以上より、RAPによる組織透明化は厚切りスライス組織標本やホールマウント標本における免疫染色において、多様な抗原の検出に利用可能であり、免疫陽性反応の3次元配置の描出に有用である可能性が示された。また。有毛動物でのホールマウント骨染色標本の作製を可能にしたRAP-B/HRと蛍光ズーム顕微鏡による骨格の観察は微細な骨病変の描出に有用であることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)
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