研究課題/領域番号 |
18K11660
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
加藤 善久 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (90161132)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン撹乱 / サイロキシン / phenobarbital / Oatp2 / ラット / マウス / 肝臓 |
研究実績の概要 |
本研究では、新たに提唱したPCBの血中T4濃度低下作用メカニズムの本質となるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体を解析し、本作用メカニズムの全容を解明する。今回、ラット、マウス、ハムスター、モルモットにphenobarbital(PB) (80 mg/kg)を4日間連続投与し最終投与後1日に実験を行った。 PB投与後、血清中総T4濃度は、ラット、マウス、ハムスターで低下したが、モルモットでは変化が見られなかった。この時、T4トランスポーターの肝臓における発現量を測定した。ラットでは、PB投与により、Oatp2、LAT1、Mrp2およびMrp3のmRNAの発現量がそれぞれ3.2倍、2.5倍、2.6倍、16.9倍に増加したが、MCT8のmRNAの発現量は変化しなかった。マウスでは、PB投与により、Mrp3のmRNAの発現量が1.3倍に増加したが、Oatp2、MCT8、LAT1およびMrp2のmRNAの発現量は変化しなかった。ハムスターではPB投与により、内標準物質(RPL27a、β-actin、GAPDH)のmRNA量が変動し、各トランスポーターのmRNAの発現量を算出することができなかった。モルモットでは、PB投与により、Oatp2、MCT8およびLAT1のmRNAの発現量はいずれも変化しなかった。さらに、ラットおよびマウスの肝臓におけるLAT1タンパクを、抗マウスLAT1抗体を用いてウエスタンブロット法により検出することを試みたが、ラット、マウスともにLAT1タンパクの発現は観察されなかった。 以上、PBによるラットの肝臓へのT4の移行量の増加は、Oatp2の発現量の増加に起因していることが示唆された。一方、マウスでは、PBを投与したマウスにおける肝臓へのT4の移行量の増加に特定のトランスポーターが関与していることは示唆されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、新たに提唱したPCBの血中T4濃度低下作用メカニズムの本質となるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体を解析し、本作用メカニズムの全容を解明する。今回、ラット、マウス、ハムスター、モルモットにphenobarbital(PB) (80 mg/kg)を4日間連続投与し最終投与後1日に実験を行った。 PB投与後、血清中総T4濃度は、ラット、マウス、ハムスターで低下したが、モルモットでは変化が見られなかった。この時、T4トランスポーターの肝臓における発現量を測定した。ラットでは、PB投与により、Oatp2、LAT1、Mrp2およびMrp3のmRNAの発現量がそれぞれ3.2倍、2.5倍、2.6倍、16.9倍に増加したが、MCT8のmRNAの発現量は変化しなかった。マウスでは、PB投与により、Mrp3のmRNAの発現量が1.3倍に増加したが、Oatp2、MCT8、LAT1およびMrp2のmRNAの発現量は変化しなかった。ハムスターではPB投与により、内標準物質(RPL27a、β-actin、GAPDH)のmRNA量が変動し、各トランスポーターのmRNAの発現量を算出することができなかった。モルモットでは、PB投与により、Oatp2、MCT8およびLAT1のmRNAの発現量はいずれも変化しなかった。さらに、ラットおよびマウスの肝臓におけるLAT1タンパクを、抗マウスLAT1抗体を用いてウエスタンブロット法により検出することを試みたが、ラット、マウスともにLAT1タンパクの発現は観察されなかった。 以上、PBによるラットの肝臓へのT4の移行量の増加は、Oatp2の発現量の増加に起因していることが示唆された。一方、マウスでは、PBを投与したマウスにおける肝臓へのT4の移行量の増加に特定のトランスポーターが関与していることは示唆されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
異なる核内レセプターに結合するPCB、それらを成分として含み「油症」の原因となったPCB混合物、ヒト血中の残留量が高い水酸化PCBおよびphenobarbitalを投与した動物を用いて、血清中甲状腺ホルモン濃度とともに、甲状腺ホルモンの血管側細胞膜から肝実質細胞への取り込み、肝細胞の側底膜から体循環への分泌、肝実質細胞の胆管側膜から胆汁中への排泄を解析する。次に、甲状腺ホルモントランスポーターを発現させた細胞を用いて、PCBによるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体解明を進める。異なるタイプのPCBおよびphenobarbitalの血清中T4濃度の低下に関わる甲状腺ホルモントランスポーターと薬物代謝酵素の協働関係を明らかにし、PCBによるT4濃度低下作用発現メカニズムの動物種差を解明する。さらに、ヒト由来試料を利用して、甲状腺ホルモンの変動を多角的に解析し、相互に関連付けて追求することにより、ヒトでのPCBの血清中甲状腺ホルモン濃度低下作用発現メカニズムを追究する。 PCB及びphenobarbitalによる血清中T4濃度の低下において提唱した新規メカニズムである肝臓へのT4の蓄積量の増加の要因を、肝臓の甲状腺ホルモンのトランスポーターに焦点を当て、血清中甲状腺ホルモン濃度の低下に関わる薬物代謝酵素などの様々な作用を考え併せ、遺伝子組み換え動物も巧みに利用し、各種実験動物の結果を統合的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
甲状腺ホルモンの体内動態および血清中サイロキシンと甲状腺ホルモン輸送タンパクとの結合率に関する薬物動態学的in vivo実験と分子生物学的なex vivo実験において、実験テクニックが向上したため、試薬や動物及び実験試料をロスすることなく研究が進み、次年度使用額が生じた。 研究をさらに進展させて、甲状腺ホルモンの血管側の細胞膜から肝実質細胞への取り込み実験、甲状腺ホルモンの肝細胞の側底膜および胆管側膜で働く排出トランスポーターの関与を明らかにする実験、ヒト甲状腺ホルモントランスポーター発現細胞を用いた実験ならびに甲状腺ホルモントランスポーターの役割を検証する実験、PCBによるラットの血清中甲状腺ホルモン濃度の低下に、肝臓と小腸におけるUDP-GTによる甲状腺ホルモンの代謝と、肝臓の甲状腺トランスポーターによる甲状腺ホルモンの取り込みおよび分泌とが、どのように協働関係を持つかを明らかにする実験を引き続き次年度に行い、さらに国際学会で研究成果の発表を行う計画であり、生じた次年度使用額はそれらの経費に充てることとする。また、大学からの研究費もこの研究の遂行に充当する。
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