研究実績の概要 |
本研究では、新たに提唱したPCBの血中T4濃度低下作用メカニズムの本質となるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体を解析し、本作用メカニズムの全容を解明する。今回、AhRの反応性が高いTCDD高感受性C57BL/6系マウスおよびAhRの反応性が低いTCDD低感受性DBA/2系マウスに、コプラナーPCBである3,3',4,4'-tetrachlorobiphenyl (CB77)、モノオルソPCBである2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (CB118)、ノンプラナーPCBである2,2',4,4',5,5'-hexaCB (CB153)を投与し、肝臓の甲状腺ホルモントランスポーターのmRNAの発現変動を検討した。 両マウスにCB77 (50 mg/kg)、CB118 (50 mg/kg)、CB153 (100 mg/kg)を投与し、投与後それぞれ7日、5日、3日に肝臓を摘出した。血清中総T4濃度は、いずれのPCB投与の場合にも低下していた。LAT1およびOatp2のmRNAの発現量は、両マウスにいずれのPCBを投与した場合にも変化しなかった。一方、MCT8のmRNAの発現量は、C57BL/6系マウスにCB118を投与したとき、1.6倍に増加し、DBA/2系マウスにCB153を投与したとき、増加傾向(1.7倍)が見られた。また、Mrp2のmRNAの発現量は、DBA/2系マウスにCB153を投与したとき、増加傾向が見られたが、その他の場合には変化しなかった。また、同様にMrp3のmRNAの発現量は、DBA/2系マウスにCB153の投与により2.4倍に増加したが、その他の場合には変化は観察されなかった。以上、両マウスにいずれのPCB投与の場合にも、血中T4の肝臓への移行の増加にOatp2およびLAT1が関与の可能性がないことが考えられる。
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