本研究では、新たに提唱したPCBの血中T4濃度低下作用メカニズムの本質となるT4の肝臓への蓄積メカニズムの実体を解析し、本作用メカニズムの全容を解明する。今回、Wistar系ラットとUGT1Aファミリーを欠損したGunnラットにphenobarbital(PB) (80 mg/kg)を4日間投与し実験を行った。 血清中total T4濃度は、PB投与により、Wistar系ラットでは40%、Gunnラットでは62%低下し、free T4濃度は、Wistar系ラットでは50%、Gunnラットでは58%低下した。血清中total T3濃度は、Wistar系ラットでは53%、Gunnラットでは62%低下した。血清中TSH濃度は、PB投与により、両ラットともに変化しなかった。PB投与後、Wistar系ラットのUGT1A、UGT1A1、UGT1A6およびUGT2B1の発現量は、それぞれ3.2、1.6、3.8、11.6倍に増加した。一方、Gunnラットでは、対照群においてUGT1A、UGT1A1およびUGT1A6は全く発現しておらず、PBを投与してもそれらの発現は認められなかった。また、Gunnラットの対照群においてUGT2B1はわずかに発現しており、その発現量はPB投与により90.2倍に増加した。この時、T4-UDP-GT活性は、PB投与により、Wistar系ラットでは1.7倍に増加したが、Gunnラットでは変化しなかった。TypeⅠiodothyronine deiodinase活性は、PB投与により、両ラットとも39%低下した。Wistar系ラットにおいて、[125I]T4とTTRおよびアルブミンとの結合率は、PB投与により変化しなかった。以上のことから、ラットにおいて、PB投与による血清中T4濃度の低下は、T4-UDP-GTの関与しない機序によって起こることが示唆された。
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