研究課題/領域番号 |
18K11661
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
杉山 圭一 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 部長 (80356237)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エピジェネティック / 化学物質 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでに酵母が示す凝集反応をメルクマールとして、発がんの促進に関わると予想されるエピジェネティック制御の撹乱を誘発する化学物質が検出できる可能を示している。凝集遺伝子FLO1が本凝集性に関与すること、また同遺伝子のプロモーター活性を指標としたバイオアッセイについてもそのプロトタイプは既に構築し、これら凝集性とバイオアッセイを統合したアッセイシステムを「FLO assay」と称している。 これまで本研究において、FLO1プロモーターの改変によるDNAメチル化など特定のエピジェネティック作用特異的に応答するバイオアッセイ系の構築を目指し、各種変異型FLO1プロモーターを作出し、評価を継続している。 検討の結果、構築した一部の変異型FLO1プロモーターにおいてDNA メチル化阻害剤5-Aza-2’-deoxycytidineの応答性が向上する可能性を認めた。現在、再現性を含めその確認・検証作業を進めている。得られている結果は複数の酵母株において認められる傾向でもあることから、蓋然性は高いものとは推測している。DNAメチル化は主要なエピジェネティック制御の1つであり、その制御は発がん性に直接影響を与えるものであることから、優先的にこの得られた結果の検証をまずは実施すべきと認識している。一方、DNAメチル化阻害剤以外のエピジェネティック修飾剤を用いた検討については、現時点では明確な検出感度上昇を示す変異型FLO1プロモーターを得るには至ってはいない。 一方、げっ歯類を用いた発がん試験で陽性報告も存在するかび毒フモニシンB1については、FLO assayに供することでエピジェネティック作用を示す可能性を認めた。本結果は、発がん性予測におけるFLO assayの有用性を支持する可能性があり、今後そのメカニズムの解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の遅延による影響を完全に排除するには至ってはいないのは昨年度同様であり、現状はこの区分が妥当と判断している。目的を達成するのに想定以上に多角的な検討を必要とする可能性を認めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度からの進捗の遅延による影響は大きく、当初の予定の一部変更に留まらず根本的な対策の必要性を認識している。研究計画の見直しはもちろん、これまでの結果ならびに現状を踏まえ、従前の考え方にとらわれないアプローチも考慮に入れた研究方針を掲げ計画を再考したい。無論、再考にあたっては、最終目的からの逸脱はないよう留意することが前提とはなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画とは異なり研究の進捗に遅延が生じていることから、本年度においても一部研究計画の変更が不可避となった。したがって、それに伴い必要となる研究計画の再考も考慮した上での次年度使用額の計上となる。今後については、当初の研究プランを広義に捉え意義ある成果を得られるよう研究費のより有効な活用に努めたい。
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