研究課題
本研究では、里山の代表的な樹種であるコナラを対象として、光合成における窒素利用特性の、窒素飽和の進行に対する応答を明らかにし、樹木生理生態学の視点から窒素飽和の指標を提供することを目的としている。三年目は前年にコナラの葉の形質の樹冠内分布を調査した6地点(東京都八王子市、府中市、神奈川県相模原市、埼玉県秩父市、群馬県みどり市、栃木県佐野市)において、植物への窒素供給量を表す土壌の窒素無機化速度の測定を6月から8月にかけて実施した。土壌の無機化速度が高い富栄養な環境に生育するコナラでは葉内の一次代謝物質および化学的防御物質の濃度が低下し、食害が増加すること、そして葉の食害率および食害に関わる葉の特性の鉛直分布は土壌環境の影響を受けないことが明らかとなった。以上の調査に加えて、富栄養環境である東京都八王子市と貧栄養環境である埼玉県秩父市のコナラに関して、前年と同様にコナラ樹冠内の葉形質の分布を測定し、測定年による傾向の変化の有無を調査した。その結果、両サイトとも食害に対する被食防衛能力として働く化学的防御物質の濃度に年次変化は認められなかった。加えて、葉の食害率にも有意な年次変化は認められず、2019年と2020年ともに富栄養な環境であるFM多摩丘陵の方が葉の食害率は高かった。得られた成果は第60回大気環境学会で発表した。また、一年目から二年目に実施した土壌の窒素利用性が大きく異なる東京都八王子市と埼玉県秩父市に生育するコナラを対象とした調査結果を原著論文としてまとめ国際学術誌に投稿している。
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