研究課題/領域番号 |
18K11665
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 啓子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (80322220)
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研究分担者 |
瀬戸 浩二 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60252897)
香月 興太 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (20423270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 殻体 / 微量元素 / 貧酸素 / AVS / Anadara |
研究実績の概要 |
2021年8月に島根大学エスチュアリー研究センター中心に行われた中海全域調査と同期して,中海におけるサルボウガイAnadara kagoshimensisの分布調査を秋に実施した。その結果を同様の調査を行った2010年の結果と比較検討することで,分布の変化並びに湖底環境との関係性について明らかにした. 環境調査は2021年8月20日~8月27日に,分布調査の15地点を含む中海全域118地点において行った.水質は多項目水質計を用いて湖底直上水の溶存酸素量(以後DO)および塩分を測定した.底質は酸揮発性硫化物量(以後AVS),強熱減量,含水率,含泥率を測定した. 分布調査は2021年9月から11月にかけて,2010年に行われた分布調査と同様に中海北部から湖心にかけて行った.調査地点は境水道から流入する海水の流れに沿って15地点を設定した.サルボウガイの採集は伝統的な漁具であるサルボウ桁を用いて行い,船で約100 mを各地点3回曳いて実施した. その結果,分布調査では個体数は少ないが2010年では生息が確認されなかった大根島南部や夏期の貧酸素が著しい地点でも、生息が確認された. この調査で得られたサルボウガイ殻体の断面をSEMで観察し、貧酸素を示すと考えられる成長停止線の存在と位置を確認した後、貧酸素の程度の指標としたAVS測定値の低い地点・高い地点・中程度の地点でそれぞれ3個体を試料をLA-ICP-MS分析に供した。環境と関係が有るとされる微量元素(主にMn・Mg・SrとCaの比)の殻内の成長に沿った変動を測定した。クラスター分析を行った結果、Mn濃度でグループが大きく分かれ、貧酸素と思われる期間に濃度が高くなる傾向が見られた。またAVSの高い地点でMn濃度が高くなる傾向も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
柱状試料から取り出した過去の殻体試料を検鏡したところ、殻体内の有機物がみられず、貧酸素と硫化水素暴露との成長停止線の判別が困難であることがわかった。そのため、研究のアウトプットを一部変更し、現在の生息環境と殻体成長停止線の関係、およびLA-ICP-MS分析による成長に伴う微量元素濃度変化に切り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
分布調査結果を中心に論文にまとめるためのデータ整備(試料の整理と成長線の再確認、必要であれば追加の試料作製)と全体のまとめ、学会発表と論文化を行う
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文化のために試料を精査し、結果をまとめる必要がある。そのためのデータ整備、成果発表が遅れていることから、試料の整理と検鏡確認(追加の必要があれば作成)、論文執筆、英文校閲、学会発表旅費などで使用する。
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