研究課題/領域番号 |
18K11667
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宇野 誠一 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (50381140)
|
研究分担者 |
國師 恵美子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (90714866)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 底質影響 / 魚胚 / 都市部沿岸域 |
研究実績の概要 |
本研究では海産魚のジャワメダカ胚を用いて都市部沿岸域から採取した底質の生物影響リスクを明らかにすると共に、これまでよりもさらに発展的な影響評価が行えるように、幾つかの特定の影響評価法の検証を行う。2019年度は、前年度に採取した東京湾底質の、ジャワメダカ胚による影響リスク評価を行った。顕著に生物影響が見られたのは川崎市~横浜市の沿岸域から採取した底質で、底質試験に供した魚胚の死亡率が著しく高かった。川崎から横浜の海岸線は京浜工業地帯の核をなす地域であり、工場の排水や往来が多い大型船などが多種多様な化学物質の負荷源となっている可能性が考えられた。さらに、海岸線には首都高速など交通渋滞が頻繁に起こる幹線道などもあり、ここからの自動車排ガスも少なからず環境汚染としての負荷源となり得ると考えられた。 もう1つ、顕著な生物影響が見られる底質が分布する地点として、千葉県の稲毛海岸付近が上げられる。この周辺は広く砂浜が広がっているが、本来、炭素含有量が少なく、粒径が大きな砂地では化学物質が高濃度で分布しにくい傾向があることが知られている。しかし、この地点では試験に供した魚胚の死亡率が他の周辺域よりも高かった。試料採取当日、サンプリング地点で、複数人の釣り人にヒアリングを行ったところ、東日本大震災のときに京葉工業地帯の一角で火災が起こり、そのとき灰や煤がが海域にかなり降り、これが長期にわたり稲毛海岸一帯に滞留していた、とのことであった。もしかするとこのときの灰がこの地点底質に降り積もり、現在も残留して影響を及ぼしている可能性も考えられた。今後、さらなる調査が必要となると思われる。 2019年度は2020年度に行う底質試験のために伊勢湾、及び大阪湾の一角で底質を採取した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
底質影響試験は順調に行っているが、さらに発展的な影響を調べるための手法開発がわずかながら遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで採取した伊勢湾などの底質について引き続き底質影響試験を行う。さらに特に影響が見られた地域については、発展的な影響評価法が確立し次第、試験に供する。化学分析などは順調に行っているため、これらのデータも用いて、化学物質分布と底質影響との関連性を検証する。
|