都市部近郊沿岸域の底質には様々な化学物質が残留するため、そこに生息する生物への影響が懸念される。これまで、海外を中心に様々な底質影響評価法が検討されてはいるが、現状、海底質の生物影響リスクを評価する確固たる手法は確立されていない。我々はこれまで海産魚のジャワメダカ胚を用いて、高精度の海底質影響評価法の確立を図ってきた。本研究では、この影響評価法を用いて、東京湾、大阪湾、伊勢湾、博多湾の都市部に近接する閣内湾域の複数地点から採取した底質に対して、影響リスク評価を行い、各内湾域の底質リスクマップを示すことを目的とした。 東京湾では、千葉県稲毛海岸近郊で採泥されたものに暴露された胚の死亡率が80%と高いリスクを示した。また、湾奥の船橋市潮見町で採取した底質も20%の胚が死亡した。その他はほとんど影響が見られなかった。東京湾はある程度湾奥にリスクのある底質が分布している傾向にあると考えられた。 伊勢湾は、セントレアで採泥した地点の底質暴露胚で64%しか孵化しない結果となった(死亡率は24%)。また、孵化した胚でも、25%程度が奇形を呈していた。また対照区の平均孵化日数が14.9日であったのに対し、22日と1週間ほど孵化が遅くなる状態であった。しかし、その他の地点では、孵化日数の遅延が幾つかの地点で見られたものの、未孵化などの次世代に影響を与えるような高いリスクを有するような底質分布は見出せなかった。 大阪湾は淀川およびその支流の河口域で孵化率が0-13%とリスクの高い底質が分布していた。 今回、博多湾に加えて近郊の洞海湾も合わせて調査を行ったが、13カ所の調査地点のうち、胚の死亡率は20-100%の範囲で見られ、どの地点でもある程度影響リスクがある底質が分布していることが分かった。博多・洞海湾では他の都市部湾内よりもリスクが高い底質が連続的に分布していると考えられる。
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