研究課題/領域番号 |
18K11669
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
高木 敬彦 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30163182)
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研究分担者 |
杉田 和俊 麻布大学, 獣医学部, 講師 (00747701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土壌 / 塩素系消毒剤 / 反応生成物 / 変異原性 / microsuspension法 |
研究実績の概要 |
鳥インフルエンザ等の発生時、その対策として畜舎や畜舎周辺に使用される各種消毒剤のうち、塩素系消毒剤の土壌添加により生成される反応副生成物には強い変異原性が検出されることを認めたことから、平成30年度は塩素系消毒剤添加により生成された、副生成物の変異原性に及ぼす環境因子(温度や紫外線照射)の影響を経時的に調べることにより、生成された変異原性の消長に及ぼす環境影響を検討した。 測定対象試料は、酪農関連施設周辺に分布する3土壌について2カ所ずつ(計6土壌)採取し、個々に塩素系消毒薬を添加して、それぞれを夏場および冬場を想定した高温環境下(30℃)、低温環境下(4℃)で保存するとともに、同様に消毒剤を添加した6土壌試料を作製して室内紫外線ランプを照射した。次に各塩素消毒剤添加土壌から定期的に一部採取して変異原性を測定した。今回は添加後3か月目まで5回の採取を継続し、測定を行った。各採取試料中の反応副生成物の抽出はアセトンを抽出溶媒とした超音波抽出法で行い、抽出後に溶媒のみを留去し、各抽出物を-80℃で冷凍保存した。 変異原性試験はSalmonella typhimurium TA100株およびTA98株を用いてS9mix添加および無添加条件下で行い、6土壌全てにおいて各条件下での経時的採取および抽出操作は終了している(約200試料)。3条件下における各抽出試料については順次変異原性測定を行っており、これまでの結果からS9mix無添加条件下で比較的強い変異原性を示していることや、消毒剤添加後に強い変異原性を示した土壌の中には高温環境下で変異原性の低下したものも認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は塩素系消毒剤添加土壌の変異原性の消長に及ぼす高温環境下、低温環境下および紫外線照射下の影響について添加直後から定期的に3か月目までの試料を継続して検討している。測定試料は塩素系消毒剤添加後の3条件下における各土壌の一部を採取し、それぞれについてアセトンを抽出溶媒とした超音波抽出で抽出して得られた有機成分を-80℃で保存している。 現在は土壌別にそれぞれの試料をAmes法の高感度化法であるmicrosuspension法で継続して測定しており、約半数の試料は測定を終了している。平成30年度の進捗がやや遅れた原因は、当初は31年に検討予定の紫外線の影響についても平成30年度に測定を行うこととするよう計画を変更したためである。その理由として、採取した塩素系消毒剤添加前の土壌の状態を変えないことを考慮し、3条件下での採取試料の前処理を優先して測定対象となる試料を作製したことによる。また、このように変更することで細菌を用いた変異原性試験では変異原性試験日が異なることによって発生する菌の活性の差の補正回数を減らすこともできる効果があり、実験誤差の影響を抑えることにも繋がる。よって平成30年度に終了予定の高温環境および低温環境が土壌中の反応副生成物の変異原性の消長に及ぼす影響についての検討はやや遅れているものの、紫外線の影響に関する検討も含めた2年間の当初の実験計画に変更はない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は各条件下において採取された試料の変異原性測定を継続するとともに、モデル実験として研究計画書に従い、令和元年度はこれまでの先行研究を参考に自然界における土壌層をガラス管内で再現し、上層の表面に塩素系消毒剤を添加する。その後、定期的に降水量デ-タから単位面積当たりに換算した降水量と同量の蒸留水を滴下して放置し、地下層への塩素系消毒剤反応副生成物の浸透状況を検討する。すなわち、ガラス管内の土壌層を一定の厚さで分取し、得られた個々の層をアセトンで抽出してその抽出物の変異原性をmicrosuspension法で測定する。この検討は複数の土壌種で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度末において、行っていた変異原性試験で使用する2台の試験管ミキサ-に不具合が生じたことから、新規購入を予定したが、すでに平成30年度の残高では購入が出来なかった。このため平成31年度の研究費で不足分を補填し購入する予定である。
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