研究課題/領域番号 |
18K11669
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
高木 敬彦 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30163182)
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研究分担者 |
杉田 和俊 麻布大学, 獣医学部, 講師 (00747701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 塩素系消毒剤 / 土壌副生成物 / 変異原性 / 土壌内の挙動 / 降雨 |
研究実績の概要 |
塩素系消毒剤散布により土壌中に発現した有害副生成物の挙動並びにその挙動に及ぼす降雨の影響について,カラム試験によるモデル実験および2つの野外試験での検証実験を行った。カラム試験は,3種の土壌それぞれを2つのガラス製カラムに入れて塩素系消毒剤を添加し,一方のカラム(A)は放置,他方のカラム(B)には蒸留水を一定量添加し,カラム下部に設置した容器で回収した。 野外試験Ⅰでは,同施設内の2カ所にステンレス製の筒を立て,塩素系消毒剤を散布し,後日に3ヶ月分の降水量相当の蒸留水を分割して定期的に添加して放置した。放置後,筒横を約1mの深さまで掘り下げ,横から深さ別に筒下の土壌をそれぞれ採取した。 野外試験Ⅱでは施設内の別の2カ所に塩素系消毒剤を散布し,定期的に1年後までそれぞれの表層の一部を採取した。採取した各土壌はアセトンで超音波抽出,回収した蒸留水は酢酸エチルとの液-液分配抽出で副生成物を抽出し,変異原性試験当日まで-80℃で冷凍保存した。各抽出物の変異原性測定はMicrosuspension法により行った。その結果,全土壌において,A,Bのカラム内土壌の変異原性に差が認められ(A>B),回収した蒸留水抽出物にも変異原性が認められたことから,土壌を蒸留水が通過する際に副生成物が溶け込んで移動した可能性が示唆された。 野外試験Ⅰでは,蒸留水の添加前に比較して添加後の表層の変異原性が減少したこと、副生成物の変異原性は採取する深さによって多少の変動はあるものの,認められたことから,蒸留水の地下浸透と共に副生成物の一部が表層から移動した可能性が強く示唆された。 野外試験Ⅱで行った表層土壌における副生成物の変異原性は散布後,ほぼ6か月で半減もしくは1/10程度まで低下したものの,1年経過しても消失までは至らず、長期残留の可能性も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、塩素系消毒剤の散布により生成される土壌中の変異原性物質の挙動および主たる物質の同定を行うことを目的としているが、コロナ禍の影響により、変異原性試験後に2020年度に行う予定であった化学分析が大学の研究室への出入りや共同研究者の学内立ち入りが制限されたことから、予定が大幅にずれ込み、遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
副生成物全体の複合毒性を測定するため、アセトンによる溶媒抽出により得られた抽出物を対象に変異原性試験を行い、塩素系消毒剤の土壌散布が有害な副生成物の出現に寄与することが認められたことから、今後は研究分担者とともに、塩素系消毒剤散布土壌中で生成された副生成物の変異原性に寄与する主たる物質を個別に検索するため、現在は副生成物中の変異原性物質の抽出に有効な前処理法を複数検討しており,得られた前処理法により変異原性を示す物質を検索し,文献等から塩素系消毒剤副生成物の変異原性への寄与の状況を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、研究分担者の研究が当初の研究計画から遅れを生じたことにより、次年度使用額は,化学分析に必要な消耗品代および最終結果を公表する学会発表や論文投稿等の費用として繰り越した分である。
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