本研究は文献サーべイに基づいて、反応性窒素に関わる諸問題の抽出を行い、知見の集約化とデータベース作成を行うこと、またデータベースを用いた潜在リスクマップの作成を目指すものである。 昨年度までに大気質、水質のデータに加え、富栄養化指標である藻類繁茂や人間や家畜の影響項目であるメトヘモグロビン血症等の項目を整備した。本年度は文献調査によって作成した窒素リスクデータベースを活用して、潜在リスクマップの作成手法の検討を行った後、モデルを用いた過去、将来シナリオ解析に着手した。分布モデルについては、当初はMax Entropy法を第一候補として考えていたが、検討の結果、機械学習(および統計)モデル間の違いが大きく見られたため、複数モデルを用いたアンサンブル平均を結果をして用いることにした。採用したモデルは、一般化線形モデル、一般加法モデル、ランダムフォレスト、サポートベクターマシーン、Max Entropy法の5つである。推定したモデルを用いて、河川、地下水、大気質の反応性窒素潜在リスクマップを作成し、複数リスクを有する地域の特定が可能になった。また将来予測では、乾燥化が進む地域で地下水質悪化リスクがあることが明らかになった。 また追加的な研究として、本研究の将来シナリオでは考慮されていない、反応性窒素リスクをもたらす新たな課題としてNH3燃焼について、レビューを行い、NH3燃焼由来の反応性窒素排出によって引き起こされる環境影響についても別途考察を行った
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