研究課題/領域番号 |
18K11676
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
鳥羽 陽 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50313680)
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研究分担者 |
古内 正美 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (70165463)
唐 寧 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90372490)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多環芳香族炭化水素 / 大気汚染 / 粒子状物質 / ナノ粒子 / 粒径分布 / 活性酸素 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
大気中の微小粒子状物質(PM2.5)を構成する粒子中のナノ粒子(粒径100 nm以下)は容易に肺胞まで達し,含有する汚染物質の毒性が強く発現する可能性がある。多環芳香族炭化水素のキノン誘導体(PAHQ)は,PM2.5中の新規PAH誘導体で,活性酸素種(ROS)生成による酸化ストレスの誘導と循環器疾患やアレルギー疾患との関係が指摘されている。本研究では,日本国内にて大気中の粒子状物質をナノ粒子(PM0.1)まで粒径別に捕集し,PAHQや各種発生源マーカーを測定すると同時にROS産生能を測定する。PAHQ濃度とROS産生毒性に基づく粒径別毒性リスクを評価することでPM2.5中のより微細なナノ粒子の重要性を健康影響の観点で明らかにすることを目的とする。 令和1年度は,平成30年度に引き続き東京及び金沢の2か所で夏季及び冬季にナノ粒子(PM0.1)画分を含む6画分に大気粒子を分級捕集した。独自に開発した高感度分析法によりPAHQを同定,定量し,PAHQの粒径分布,発生源やROS産生への寄与を評価した。その結果,捕集場所や季節によらずPM2.5中にPAHQの80%以上が存在しており,PAHQの粒径分布を明らかにした。さらに,発生源指標を用いた解析の結果,大気中での二次生成がPAHQの発生源に対する寄与が大きいと推定された。特に高濃度で存在するPAHQほど二次生成の寄与が大きい傾向にあった。また,ジチオスレイトール(DTT)アッセイにより各粒径画分のROS産生能を測定した結果,各粒径のROS産生能に対するPAHQの寄与度は,粗大粒子よりも蓄積モード粒子(0.1~2 μm)やナノ粒子で高い傾向にあり,特に寄与の高い4種類のPAHQの中には,本研究によって初めて測定できた物質もあり,毒性の推定のためにROS産性能を基準としたPAHQのモニタリングや評価の必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,研究計画どおりに夏季と冬季に東京及び金沢でナノ粒子画分を含む大気粒子を捕集することができ,観察された粒子濃度も他の情報源や過去のデータと整合性の高いものであった。捕集した試料に対して測定対象としている新規PAH誘導体である多環芳香族炭化水素類のキノン誘導体(PAHQ)について,独自に開発したGC-MS/MSによる高感度な分析法により,ナノ粒子画分を含めて分級捕集した微量の粉じん試料であっても測定が可能であり,主目的であるPAHQの分析は順調に進行している。また,ジチオスレイトール(DTT)アッセイによる各粒径画分の活性酸素種(ROS)産生能の測定を行い,PAHQの定量値からROS産生に対するPAHQの寄与度を算出することを可能にしており,粒径別毒性リスクの評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
東京及び金沢におけるナノ粒子を含む大気粒子の捕集を年2回(夏季及び冬季)、2年間継続実施し終了したことから,最終年度では捕集した試料の分析と結果の解析を完了する。すなわち,多環芳香族炭化水素類(PAH)のキノン誘導体(PAHQ)と親化合物であるPAH,自動車排ガスや二次生成指標となるPAHのニトロ誘導体や有機性炭素(OC)及び元素状炭素(EC)の分析を行い,粒径分布と発生源や季節変動との関係について解析する。また,ジチオスレイトール(DTT)アッセイによる各粒径画分の活性酸素種(ROS)産生能に対するPAHQの寄与に関する解析を完了し,PM2.5中のより微細なナノ粒子中の有機汚染物質の重要性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な物品を購入した結果、見積もりよりも少額で済んだために次年度使用額が生じた。次年度に必要な物品を購入する際に適切に使用する。
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