研究課題/領域番号 |
18K11677
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松井 康人 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (50533501)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気体試料導入装置 / ナノマテリアル / 曝露評価 |
研究実績の概要 |
ナノマテリアルを含む実製品(コーティングタイルや化粧品、樹脂材など)を耐候性試験し、その試験体をテーバー試験機にて摩耗させることで、負荷試験時のナノマテリアル発生量とその変化を、耐候性試験の有無で比較・評価することが本研究の目的である。平成30年度には、この発生したナノマテリアルの同定、定量及び、摩耗試験時における副次的に発生したナノマテリアル(樹脂に混練させたCNT製品の場合には、摩耗によるナノサイズの樹脂を指す)と、原材料として使用されたナノマテリアル(樹脂に混練させたCNT製品の場合には、CNTやCNT含有樹脂を指す)の選別方法を、金属(ICP/MS)と個数濃度(SMPS、FMPS、CPC)に着目した検出により検討した。 ICPのプラズマに導入されたエアロゾルを検出するには、1ミリ秒以内のイオン化が求められ、ある一定以上の大きさではこれが完結せず、分析精度の低下を生じる。また粒子の組成によってもイオン化率は変化し、金属酸化物は沸点・融点が高いため完全なイオン化が行われない傾向がある。そこで、粒径が明確なAg(銀)ナノ粒子懸濁液を気相に噴霧し、粒径とカウント値の相関を調べ、組成毎/粒径毎の定量性についての基本情報を得た。 その結果、粒径が150nm以上の粒子においては、DLS (動的光散乱法) を用いて測定した溶液中の粒径分布と、ICP-MSを用いて測定した気体中の粒径分布とではピークの位置が完全には一致せず、気体中の粒子を測定した際に、粒径が大きくなる傾向を得た。DMAにおける分級誤差は考えにくいことから、発生粒子に粒径変化が生じた可能性が考えられた。一方で、150nm以下の粒子では、良好な相関が得られたことから、ICPにおけるイオン化量も一因であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ナノマテリルを含む実製品の曝露評価を実施するために、1)対象とする試験体の選定と物性等基本情報の測定、2)耐候性試験、3)摩耗試験方法の条件設定と摩耗試験、4)発生したナノマテリアルのサンプリングと重量濃度及び個数濃度の評価、5)ICPによる含有元素の同定と定量、6)気体試料導入装置を用いた経時的な元素濃度分析と、個数濃度との比較、の6過程を計画している。これにより、実製品から発生する、a)CNTやTiなどのナノマテリアルそのものの、b)ナノマテリアルが含まれる樹脂などのナノマテリアル以外の物質、c)aとbの複合的な物質の選別と同定、定量を試みる。平成30年度には、6過程の5、6)に着目し、実製品ではなく、Agナノ粒子懸濁液を用いることで、発生した粒径と濃度との関係を求めることができた。一方で元素分析は、元素種や元素の形態(酸化物であるかどうかなど)によっても、イオン化率が異なることが予測されるために、市場に出回る他の元素種においても、その値を求める必要がある。今年度は、Ag懸濁液を、10~2000nmの間で、複数準備することで発生を試みたが、発生そのものの再現性がやや低かったことから、他の元素種での試験ができなかった。この課題以外は、計画通りに進んでいることから、上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗で述べた通りに、本研究は6つの過程からなる。初年度は5、6)に着手することで、ナノマテリアルの定量方法を検証できた。本年度は、3、4)である摩耗試験方法の条件設定と摩耗試験、発生したナノマテリアルのサンプリングと重量濃度及び個数濃度の評価を試みる。同時に、平成30年度の課題でもある、Ag以外の元素における検証を進め、実製品を用いた摩耗試験との関係性を得る。
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