研究課題
本研究では,環境DNAによる生物分布調査を社会実装するため必須となる,野外における環境DNA検出阻害を加味した生物量推定式の作成を最終目標としている。私達はこれまで,有機物汚濁が高い水でも清冽すぎる水でも阻害が発生することを発表しており,本研究では主に水質と有機物・無機物に勾配をかけた実験と野外調査を行う予定にしている。 研究初年度となる2018年度に出産・育児休暇による研究中断があり,2019年10月から研究再開,今年2021年度は研究3年目となる。2021年4月から2022年3月までの主な実績として,微細無機物粒子による環境DNA検出阻害量を把握するための検証実験,論文作成などがある。これまでの研究では,環境水中の微粒子による環境DNA検出阻害は無機物よりも有機物が優先する場合に阻害が高まることがわかっている。しかしこれまでの成果として,水中のSS無機物も阻害要因として重要であることが示されている。そこで今年度は微細無機物粒子(泥)と泥に含まれる細菌量,水流環境(止水・流水)に着目した操作実験を行うこととした。野外より採取した泥に,燃焼・冷凍などの処理を行うことで泥内の有機物量や細菌量,無機物量に勾配をかけた飼育用水を作成し,その水でゼブラフィッシュを飼育して環境DNA放出量と,その分解過程である環境DNA減衰率を比較した。実験は止水・流水の両条件で行なった。その結果,流れのない場合には,どのような状態の泥であっても(有機物や細菌の有無によらず),泥によりDNA検出量は低下すること,DNA減衰率は泥の状態により変化することが示された。また,流れのある場合には結果が異なることも示された。2年目に得たデータと,今年度得たデータを使用し,1年目に作成した補正式の精度を高めて論文発表とするため,現在は,2021年度の実験データに対して,詳細な解析を行なっているところである。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件)
Diversity and distributions
巻: - ページ: -
10.1111/ddi.13517
陸水研究
巻: in press ページ: -
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 7525(2021)
10.1038/s41598-021-86278-z