研究課題
PCR法は,食品安全性分析や環境調査に広く適用されている。また,複数の遺伝子を同時に増幅させ,細菌を検出するMultiplex PCR法も存在する。対象とする多数の病原遺伝子が増幅できれば,次世代シーケンサーによる各遺伝子のリード数からの定量的かつ一斉に解析が可能となる。そこで本研究では,大腸菌の7種類の病原遺伝子についてプライマーを設計した。そして,Multiplex PCR法によって病原性大腸菌を一斉検出する方法の開発を試みた。PCR法による増幅確認を行った結果,eaeA遺伝子以外は増幅が確認できた。stx1,stx2,ipaH,STh,およびLTの5つの病原遺伝子については,設計した増幅サイズのバンドが確認された。大腸菌の特異遺伝子であるuidA遺伝子も増幅が確認された。また,ipaHにおいてuidA遺伝子が確認されなかった理由は,標準遺伝子が赤痢菌であったためであると考えられる。しかしながら,aggRとeaeAについては増幅が確認されなかった。aggRにいては,単独系のPCRで増幅が確認された。このことから,7種類の大腸菌の病原遺伝子のうち5種類を一斉に検出することが可能である。一方で,Multiplex PCR反応において増幅が確認できなかった病原遺伝子もあったため,高効率で増幅することができるプライマーの設計やPCR反応条件の最適化といった課題も確認された。Multiplex PCR法によって,7種類の大腸菌の病原遺伝子のうち5種類を一斉に検出することが可能となった。設計したプライマーの増幅サイズは300-400bpとしており,次世代シーケンサーによる一斉検出・定量が次年度最終の課題となる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに,対象とする重要な病原遺伝子7種類のうちの5種について,Multiplex PCR法で一斉検出できる検出計を確立することができた。プライマーは増幅サイズは300~400 bpの範囲で設計しており,増副産物の定量への展開が可能となった。残る2つの遺伝子については,別の増増幅条件おいて,検出が確認されているため,2回のPCR検査で,全7種類の病原大腸菌の重要な遺伝子が検出できるようになった。したがって,研究の進捗状況は順調である。
本研究課題のゴールは,全7種類の病原大腸菌の重要遺伝子の検出と定量である。2019年度において,2回のPCR検査で,全7種類の病原大腸菌の重要な遺伝子が検出できる遺伝子の増幅系が確立できている。そこで,最終年度の2020年度は,7種類の病原大腸菌の重要遺伝子の増副産物について,デジタルPCRによるコピー数と次世代シーケンサーのOTU数による定量化の比較・検討を行う。
遺伝子解析の分析試薬類について,一括購入やバーゲン期間での発注を心がけたため,当初の計画よりも経費が削減できた。この削減分は,2020年度の遺伝子解析と次世代シーケンサーの試薬類に配当して効果的に経費を活用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
PLOS ONE
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