研究課題/領域番号 |
18K11681
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
張 函 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10315608)
|
研究分担者 |
陳 介余 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20315584)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | フライ過程 / カルボニル化合物(CV) / 総極性化合物(TPC) / 生成速度 / 劣化評価モテル / フライ油の劣化特性 / トコフェロールの抗酸化作用 |
研究実績の概要 |
10種食用油の不飽和脂肪酸(TUFA)および総トコフェロール(TToc)の熱分解は加熱時間に線型的な変化(YTUFA=KTUFA*t、YTToc=KTtoc*t)であること明らかにした。フライ過程でのトコフェロール同族体の分解速度はγ>α>δ-TOCの順に速く、一価不飽和脂肪酸(MUFA)の多い食用油ではトコフェロール(TToc)の分解が先行して食用油の安定性を高める特徴があり、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の多い食用油では、トコフェロールと不飽和脂肪酸の間に相互交替的な分解挙動を見出した。 また、10種のフライ油の品質分析および解析より、フライ過程で生成されたカルボニル化合物(CV)および総極性化合物(TPC)の量は、フライ時間に線型的な関係(CVt=KCV*t+CV0、TPCt=KTPC*t+TPC0)で増加することを解明した。これまでに得られた多数のデータを用いて、重回帰分析法による食用油の品質劣化が主にその内部組成特性に依存する関係を精査した。フライ油のCV生成速度(KCV)はフライ前の各食用油のPUFA/TToc比値と、TPCの生成速度(KTPC)はフライ前の各食用油のC18:2/C16:0比値と最も高い相関関係にあることを見出し、フライ油の二次酸化物生成量の予測モテル、および総極性化合物発生量の予測モテルの構築に成功した。また、予測モテルの変形式によって、フライ油の安全使用限界値(CV=50 µmol/g、TPC=24%)に達する最大のフライ時間(tCV、tTPC)を導き出すことができた。
本年度に実施した研究は、フライ過程における食用油の劣化特性およびトコフェロールの抗酸化作用の役割を明らかにした。構築されたフライ油の品質予測指標および劣化評価モテルは新たな品質評価手法として有用である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目では、まず、異なる劣化度の試料調製およびその特性の解析を行った。菜種油をはじめ、大豆油、米油など数10種類の植物油を試料油とし、経時的にサンプリングし、異なるフライ時間における試料の不飽和脂肪酸分解特性を解明した。また、食用油に含まれている微量成分量であるトコフェロールの熱変化特徴および各試料油の脂肪酸分解速度の相互作用の解明度および劣化により生じた二次酸化物質および有害成分の組成を解析し、試料油の脂肪酸組成および微量含有成分の影響を検討している。 2年目では、フライに伴う食用油の劣化特性およびそれに関連する各食用油の内部組成特性との相関関係を検討した。またフライ油に対し、各試料油の脂肪酸組成の変化をはじめ、フライによる生じた二次酸化物質(CV)の生成量を解析し、不飽和脂肪酸組成に依頼する特性を解明した。また、メタボロミクス解析手法を活用したフライ油の劣化特性のモデリングの構築を行い、重回帰分析手法でフライ油の劣化度評価値(CV、TPCなど)との関連性を明らかにしながら劣化特性のモデルを構築する。 本研究課題はおおむね順調に進展している。結果としては、国際誌に4報の論文を掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目では、主にフライ油の劣化およびその風味の変化特性について研究を進める。 各種のフライ油をGC/MS、およびフラッシュGCノーズHERACLESⅡシステムで分析し、スペクトルデータを保持指標RIで統一形式に変換し、フライ時間と揮発性匂い成分の発生との関係を解明し、PLS回帰分析手法でフライ油の劣化度評価値(CV、TPCなど)との関連性を明らかにしながら、匂い成分を用いた劣化特性のモデルを構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度では、人件費・謝金の執行は計画より少なかったため、約14万円程度の残金が生じた。今年度分として請求する助成金と合わせて、計画とおりに各劣化油の揮発性におい物質をGC/MS、およびフラッシュGCノーズHERACLESⅡで分析し、PLS回帰分析手法でフライ油の劣化度評価値(AV、TPCなど)との関連性を明らかにしながら、フライ油の風味劣化特性の評価モデルを構築する。そのために標準試薬品の購入および分析器具の購入を増える予定である。
|