研究実績の概要 |
中分子量範囲(MW 600~2,000)の高分子化合物存在下における環境化学物質の細胞毒性変化について検討し、複合影響の予測手法確立のための新たな基盤形成を目指した。 昨年度、SH-SY5Y細胞(ヒト神経芽細胞腫由来)を用いた研究において、単独では細胞の増殖・生存に抑制効果を示さない濃度のポリエチレンイミン(PEI:平均分子量1,200)が、殺菌剤あるいは加硫促進剤として使用されるチウラムの細胞毒性を相殺することを示した。今年度は、分子量の異なる2種の新たなPEI(平均分子量600及び1,800)がチウラムの毒性効果に及ぼす影響を評価したところ、2種ともに平均分子量1,200のPEIと同等の相殺効果を認めた。一方、PEI単独での影響をみたところ、分子量の増加と共に細胞増殖・生存の抑制効果は増大した。 次に、Caco-2細胞(ヒト結腸癌由来)を用いて、種々の高分子化合物が単独で消化管上皮細胞の増殖・生存に与える影響を比較検討した。その結果、PEI(平均分子量1,200及び1,800)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基部分:C12及びC16、分子量:約1,200)がμg/mLオーダーで細胞増殖・生存を抑制する一方で、ポリアクリル酸とポリビニルアルコールはμg/mLオーダーではほとんど影響がないことが判明した。さらに、PEIは、SH-SY5Y細胞でみられたのと同様、チウラムによる細胞毒性を相殺することが示された。これらの複合影響のメカニズムに関して、今後さらに解析を進める予定である。 一方、Caco-2細胞透過性試験により、高分子化合物共存下における環境化学物質のbioavailabilityを検討したが、4時間の接触では化学物質の透過性に対して顕著な影響は認められなかった。
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