研究実績の概要 |
バイオオーグメンテーションは汚染物質分解細菌を外部から投入して効率的に浄化する生物学的手法であり、汚染サイトから単離した分解細菌を利用できればより環境に優しい浄化技術となりうる。本研究では、分解細菌を濃縮する効率的な培養法として標準活性汚泥に磁性粉を吸着させた磁化汚泥を用いる磁化活性汚泥(MAS)法を採用し、高い汚泥濃度を維持しつつ馴養を行った。本年度は1,4-ジオキサンをモデル汚染物質とするMASの培養を継続し、馴化汚泥の1,4-ジオキサン分解特性および汚泥内菌叢の調査、さらに分解に関与する細菌の単離を試みた。 培養752日目以降では1,4-ジオキサンとTHFのみを炭素源とする培養を行った。その期間中のMLVSSは9000~10000mg/Lで推移し、CODcr による除去率は95~97%であり、THFが完全に除去されたと仮定した場合の推定1,4-ジオキサン除去率は87%であった。16S rRNA遺伝子に基づいたDGGEによる全細菌種の解析により、培養初期から中期では優占種を示すDNAの大きな変化が認められ、培養中期以降では優占DNAが長期にわたり存在し、馴養が安定化したことが示唆された。1,4-ジオキサンの初期分解に関与するSDIMO遺伝子を標的としたDGGEでも長期的に存在するDNAが検出され、そのDNAから決定した塩基配列は既に1,4-ジオキサン分解が報告されているPseudonocardia sp. D17株と一致した。 また馴化した汚泥から1,4-ジオキサン単独及び1,4-ジオキサンとTHFを含む培地で増殖するコロニーを単離し、Pseudonocardia carboxyvoransと高い相同性を示した。以上の結果より、MAS法を用いることで1,4-ジオキサンを主要汚染物質とする活性汚泥の馴養が可能であり、さらにより効率的な分解細菌の単離の可能性が示唆された。
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