研究実績の概要 |
森林土壌-植生系における異なる吸着資材によるセシウムの植生と系外への移行抑制効果を明らかにするために, ①岐阜県伊自良湖周辺で採取した森林土壌(常緑針葉樹,落葉広葉樹,混合林,竹林)を用いて室内吸着実験を行い,異なる森林土壌におけるセシウムの吸着能力を検討した。フロイントリッヒ吸着等温線解析やSEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)分析を援用して検討した結果,森林土壌におけるセシウムの吸着能力は土壌タイプによって大きく異なっており,土壌の陽イオン交換容量(CEC)との間に強い正の相関があることが分かった。 ②異なる産業廃棄物系吸着資材としてのセシウムの吸着能力の比較評価を行った。そのため,下水汚泥焼却灰(P回収済),炭化汚泥,鋼鉄スラグ,籾殻やココナッツ殻バイオ炭をそれぞれ吸着資材とした室内吸着実験を行った。その結果,炭化汚泥,ココナッツ殻バイオ炭,下水汚泥焼却灰のいずれも森林土壌よりセシウムに対する高い吸着能力を有しており(炭化汚泥>ココナッツ殻バイオ炭>下水汚泥焼却灰>森林土壌>籾殻バイオ炭>鋼鉄スラグ),特に炭化汚泥の吸着効果が最も優れていることが分かった。 ③森林土壌-植生系における産業廃棄物系吸着資材によるセシウムの植生と浸出水への移行抑制効果の比較検討を行った。そのため,上記②で選出した炭化汚泥,ココナッツ殻バイオ炭,下水汚泥焼却灰(P回収済)を異なるセシウム汚染レベル(0, 25, 50 mg kg-1)の森林土壌に異なる量(添加量0, 5%, 10%)を添加し,ネピアグラスの室内ポット栽培実験を行った。結果として,吸着資材添加なしの場合に比べて,添加ありのいずれのケースにおいても植生や浸出水へのセシウムの移行量の減少が確認された。特に,ココナッツ殻バイオ炭の抑制効果が顕著であることが判った。
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