近年,大気汚染物質として粒子状物質が注目を集めている.本研究では,学術的な観点から微粒子予測モデルの構築と圧力が及ぼす影響の検証を,実用的な観点から微粒子抑制手法の提案を試みた.最終年度である本年度は,次の3つの取組みを実施した. (1)作成したモデルについて,直噴ガソリンエンジンに対して検証を行った.直噴ガソリンエンジンでは燃料噴射時期が微粒子(以降,すす)排出量に大きな影響を与え,吸気行程初期および圧縮行程後期噴射条件において,排出量が増加する.前者では液面燃焼によるすす生成が支配的であり,後者では混合時間不足による生成も同時に起こる.設計計算ではまず,このような傾向が予測できる必要がある.本研究では直噴ガソリンエンジンを用いて行われた実験結果に対して数値計算を行い,本特性が冷却水温度によらず再現可能であることを示した.また,定量的な再現性を改善するとともに,その手法を明示した.さらに,実験において新たに下死点近傍で燃料を噴射した場合に微粒子が増加する傾向が観られたため,数値解析によって現象解明を行った. (2)作成したモデルを拡張し,代替燃料であるエタノール混合条件に対応した.さらに,2年度までに実施した模擬筒内液面燃焼実験のうち,イソオクタン,トルエンにエタノールを混合した条件について,モデル検証と改良を行った. (3)初年度に高圧容器を用いた実験で生じた問題は2年度に概ね解決し,圧力を変化させた場合に燃料・空気拡散火炎から生じる微粒子量の定量的計測に成功した.本年度は,研究担当者らが提案している模擬筒内液面燃焼実験を圧力容器内で実施することに成功した.約2気圧までであるものの,イソオクタンを供試燃料とした場合の液面燃焼現象を定常的に形成し,約2気圧までの範囲ですすが増加する傾向を定量的に計測した. なお,以上の結果として,本年度は論文2報,学会発表9件の報告を行った.
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