研究課題/領域番号 |
18K11699
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
森 一俊 帝京大学, 理工学部, 教授 (60566941)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ディーゼルエンジン / BDF / 燃焼 / DOC(参加触媒) / DPF / ナノ粒子 / 粒子生成メカニズム / 粒子排出メカニズム |
研究実績の概要 |
COVID-19の影響で研究進捗に不安を感じつつ研究内容を吟味・精査し研究を推進,ナノ粒子の生成・排出メカニズム解明を図った研究結果を記す。 ①JIS2号軽油と廃食油ベースのバイオ・ディーゼル燃料(BDF:Bio-Diesel Fuel)を燃料に用いエンジン全運転領域のナノ粒子生成メカニズムの把握研究では,負荷の上昇に伴い粒子数が減少し排出される個数ピークを示す粒子塊の大きさはJIS2号で約52nm,BDFで約46nmを示すこと,回転数の上昇につれ粒子数は増大し280Nm/3000rpmの高負荷/高速の条件では粒子塊も約62nmと大きくなること,EC/OC(Elemental Carbon/Organic Carbon)比率も増大することも判明。②DPF壁面上にスート層が形成された状態でDPFを再生(Regeneration)した場合のナノ粒子の大気中への排出挙動現象の把握研究では,スート堆積量が多い場合は,約10nm近傍のナノ粒子を排出個数の最大値としJIS2号は約75nm,BDFは約95nmの粒子塊をピークとする二山形状を示し,堆積量が少ないと上記粒子塊がピークの一山形状を示すことなど,多くの興味深い現象を把握。③DOCの装着無しでDFP単独の場合のDPF壁面上へのスート層形成過程(粒子の捕集・堆積)とDPF再生条件下に於けるナノ粒子の排出現象の把握研究では,DOCが堆積されたスート層を破壊しナノ粒子を大気中に排出させる役割を持つことを把握。④BDFを用いると含酸素効果によると予想するが,JIS2号軽油に比べナノ粒子の排出個数が増大することが判明。⑤JIS2号軽油とBDFおよび後処理装置後のナノ粒子一粒の径は,24~27nmを示すことも判明。 令和元年度の成果の確からしさを確認し令和元年度の成果を補填しつつナノ粒子の生成・排出メカニズムの新たな知見を得ることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響に伴い研究開始が遅れ,当初3回予定の粒子計測装置の借用が2回になるなど想定外のことが発生し研究計画・実行の見直しを迫られ,令和元年度までの成果を高めるのに必要な研究内容に絞り込み実行に繋げ,下記知見を得た。 エンジン負荷と回転数増加に伴いEC/OC比率が高まること,DPF再生時の粒径分布形状が二山形状を示すのはDPF壁面上のスート堆積量が影響すること,DPF再生時(280Nm/3,000rpm)に大気中に排出されるナノ粒子の総排出個数は,エンジンから排出されるナノ粒子個数よりも少なく(多くがDPFで捕集・堆積されるため),エンジン生成が少ない10nm近傍のナノ粒子が排出量の最大値を持ち,JIS2号軽油の場合,エンジンで生成される最大個数を示す粒子塊の径は約52nmなのに,DOC + Cordierite DPFの後では約75nm,SiC DPFは約95nmを示し粒子塊が大きくなると共に二山形状を示すこと,DOCの装着が無い場合,DPF再生時の粒径分布はスート層の崩壊(by DOC)により出現する二山形状を示さず,上述の粒子塊を排出ピークとする一山形状を示すこと,排出個数はDOC装着時に比べ減少すること,含酸素燃料のBDFの場合,DOC入口の排気温度の高低に関わらず,JIS2号軽油よりも排出個数が多くなると同時に,粒子塊の径は小さくなることなど,エンジンで生成され後処理装置(DOC,DPF)を通過し大気中に排出されるナノ粒子の排出メカニズムを把握することが出来た。ナノ粒子一個の大きさも高負荷/高回転時と後処理装置後で計測,25nm前後であることも把握出来た。 COVID-19の影響で令和2年度に国際学会などでの成果発表が出来ず,補助事業期間の延長を申請した。厳しい環境の下,研究の一部が遂行出来ず残念ではあったが,得られた今回の研究成果には満足している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度迄の事業期間が終了したが,お陰様で補助事業期間延長承認が得られ,令和3年度も研究が可能となったので,本年度は,令和元年度と2年度の研究成果を詳細解析,より深く広範な知見を得ることを試みつつ,その成果を世に問うべく,国内3件,国際会議1件の研究論文を執筆,COVID-19の厳しい状況の下でWeb開催される,日本機械学会2021年次大会,FISITA2021 World Congress,自動車技術会2021秋季大会,第32回内燃機関シンポジウム(2021)で発表すべく企画・準備中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該補助金のお陰で,令和2年(2020年)度の補助金最終年度に於ける研究実績の概要や現在までの進捗状況に記載した成果が得られたが,研究計画の見直しや予定していた海外に於ける国際会議での研究成果発表などがCOVID-19の影響で延期となり,実験用器材の購入および翻訳料と海外渡航費用の消費が出来ずに次年度使用額が生じた。 補助授業期間の延長が認められた(令和2年(2020年)度⇒令和3年(2021年)度)ので,海外の国際会議での論文翻訳料や出張費用他に当該助成金を活用する。
|