本研究は,燃焼機器から生じる炭素を主成分とする「すす」の捕集から分解までを一連の過程で実現する新手法について実施された.炭素粒子のような導電性微粒子を静電集塵により除去・分解することは従来困難であったが,集塵極を帯電誘電体とすることでこの問題を解決しようとするのが,そもそもの研究の意図である.課題研究では,本技術に伴い生じると予想される重要な現象の評価に主眼を置いた. すなわち,(A)誘電体表面を帯電させるために供給されるイオンが引き起こすと考えられる捕集微粒子の再飛散,(B)炭素粒子の非熱プラズマによる酸化分解領域,(C)非熱プラズマにより誘起されるイオン風による再飛散,の3点を評価することを課題項目として挙げた.これらの項目について,実排ガスを用いた実験と粒子軌跡を計算する数値シミュレーションとを併用して研究を進めた. 各項目について結果を簡単にまとめると,(A)供給イオンは微粒子の付着力をむしろ強化する方向に働く,(B)微粒子付着濃度によらず,同程度(表面放電極端から5 mm程度)の酸化分解領域が得られた.酸化分解には熱的作用よりもプラズマ中で生じる活性酸素種による酸化分解が大きく寄与していると考えられる,(C)イオン風の生じるほどの高い印加電圧は必要ない,という結果が得られ,本技術実現に対する懸念点が解消されたということができる. さらに,誘電体表面を帯電させるためには,間欠的な電圧印加で十分であり,むしろ,間欠的な印加により,誘電体表面に沿う方向の電位の不均一が生じ,微粒子がより効果的に誘引されることが見いだされた.集塵極の面方向の電位不均一を利用することは,静電集塵技術としての新しいコンセプトである.
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