最終年度は,これまでの研究の単一ユニットを2つ組み合わせたモデルについて,音響理論計算を行った.具体的には,それぞれの単一ユニットにおける音圧成分の低減に関する関係式よりユニットの四端子定数を求め,その積をとることにより防音ユニット全体の四端子定数を求めた.また,得られた四端子定数より防音ユニットの透過損失TLを導いた.次に,理論計算により得られたTLの妥当性を示すため,実物ユニットにおける実験を行うと共に,COMSOL Multiphysicsによる音響シミュレーション解析を実施した.両者のTLを比較した結果,騒音の要因となる共振周波数の発生位置がよく一致したため,本理論計算の有効性が明らかになった.得られた関係式より,減音効果が最大となるユニットの構造,および寸法・開口位置・面積等のパラメータの算出が可能となる.現在,これらの内容をまとめた論文を海外の学術誌に投稿しており,現在査読中である. 全体を通して,当初の計画では予定していなかった単一ユニットベースの見直しを行ったため,最終目標である試作防音窓の製作までは至らなかった.しかし,トレードオフの関係にある防音機能と換気機能の両立,および遮音性能の目標値である20dB~30dBを達成するためには,単一ユニットベースの見直しは重要であり,結果として2019~2021年度の研究実績概要に示す単一ユニットモデルについて,音圧の関係式を確立することができた.
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