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2019 年度 実施状況報告書

ピンサー機能を附与したジフェノールを鍵とする高選択的パラジウム抽出剤の革新的開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K11705
研究機関秋田大学

研究代表者

山田 学  秋田大学, 理工学研究科, 講師 (90588477)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードピンサー型抽出剤 / パラジウム抽出剤 / 溶媒抽出法 / 白金族分離精製
研究実績の概要

本研究は、ピンサー配位子特有の性質である特定元素と特異的な結合を形成する能力を附与したパラジウム抽出剤を開発し、二次資源に含まれるパラジウム(Pd(II))を高選択的・高効率で回収できる抽出システムの構築を目的とする。
令和元年度は、「配位子構造中の3つの元素が金属と配位して特異的な結合を形成する」機能を附与したパラジウムに高選択性を示すピンサー型抽出剤の開発を取り組み、Pd(II)の抽出実験まで展開することができた。
本年度、2,2’-チオビス(4-ターシャルブチルベンゼンチオール)のチオール基(-SH)に塩基性条件下、2種のブロモアルカンを作用させ、2種のアルキル基の導入を検討した。その結果、オクチル基とブチル基のアルキル鎖を持つ2種の目的物の合成に成功した(収率47%と88%)。
合成に成功したオクチル基を導入した抽出剤に関するPd(II)の抽出特性について調査を行った。Pd(II)とPt(IV)、Rh(III)の3種の混合水溶液からの抽出実験では、Pd(II)への高い選択性が示された。他の金属に対する抽出は示されなかった。現在、抽出条件の精査段階ではあるものの、二次資源である使用済み自動車排ガス浄化触媒の浸出溶液から効率的にPd(II)を抽出(抽出率94%)できることも見出すことができた。その他の金属に対する抽出率は5%未満であった。以上、Pd(II)に高い選択性を有する抽出剤であることが示された。
今年度は、もう2種類の基本構造をベースとしたピンサー型抽出剤の開発も試みた。基本構造には、架橋部にメチレン基(-CH2-)を持つ2,2’-メチレンビス(4-ターシャルブチルフェノール)とイソフタルアルデヒドであり、それぞれスルフィド基とチオアミド基の導入を行い、各反応の条件の精査を行っている段階ではあるが、最終目的物までの合成を確認することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度の目標は、最終生成物であるピンサー型抽出剤の合成手法を確立することであった。各段階での反応条件の最適化を行い、2,2’-チオビス(4-ターシャルブチルフェノール)を出発物質としての2種のピンサー型抽出剤を合成に成功した。また、2,2’-メチレンビス(4-ターシャルブチルフェノール)を出発物質とした1種の新たなピンサー型抽出剤の合成にも成功しており、さらには、イソフタルアルデヒドを出発原料としたチオアミド基を有する2種のピンサー型抽出剤の合成まで研究を展開することができた。
また、合成に成功したピンサー型抽出剤の内、1種のピンサー型抽出剤において、Pd(II)に対する抽出特性および効果的な抽出条件(抽出剤や塩酸濃度、接触時間など)を明らかにすることができた。二次資源である使用済み製品からのPd(II)の回収においては、使用済み自動車排ガス触媒の浸出溶液から、高効率でPd(II)を抽出できることも見出すことができた。
以上のことから、今年度のピンサー型抽出剤の合成に関する目標は達成でき、さらにPd(II)の抽出実験まで研究が進展していることから、本研究課題は当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

本年度の研究成果を踏まえ下記の課題に重点的に取り組む。
本年度、新たに着手した2,2’-メチレンビス(4-ターシャルブチルフェノール)とイソフタルアルデヒドを基本構造とするピンサー型抽出剤の合成条件を検討し、収率の向上を目指す。
また、合成に成功したピンサー型抽出剤のPd(II)へ抽出条件の検討を行い、最適な抽出・逆抽出条件の検討を実施する。白金族金属(Pd(II)をはじめ、Pt(IV)やRh(III)の3種類)混合した模擬溶液から選択的にPd(II)を抽出できるか確認する。抽出メカニズムの解析も取り組み、ピンサー型抽出剤特有の金属捕捉形態を選定しているか追及を行う。
実際のリサイクル資源(二次資源)である使用済み自動車排ガス浄化触媒の酸浸出液からのPd(II)の選択的な抽出条件の精査を行う。さまざまな抽出条件(抽出剤濃度や塩酸濃度、振とう時間など)を検討し、最も効率が良いPd(II)の抽出条件を明らかにする。最適な抽出条件の検討を行った後、逆抽出にも取り組み、酸やアルカリ、チオ尿素などのストリッピング剤を使用し、最適な逆抽出条件の検討を図る。抽出剤の再利用性についても同様に評価し、Pd(II)の選択的抽出システムを構築する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Recovery of Pd(II) from Leach Solutions of Automotive Catalysts by Solvent Extraction with New Thiophosphate Extractants2020

    • 著者名/発表者名
      Yamada, M.; Rajiv Gandhi, M.; Kunda, U. M. R.; Mori, T.; Haga, K.; Shibayama, A.
    • 雑誌名

      Hydrometallurgy

      巻: 191 ページ: 10522

    • DOI

      10.1016/j.hydromet.2019.105221

    • 査読あり
  • [学会発表] ピンサー配位子の構造的特徴を利用したパラジウム抽出剤の開発2019

    • 著者名/発表者名
      山田 学
    • 学会等名
      資源素材学会東北支部 若手の会
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of Pincer-Type Extractant for Separation of Palladium from Leach Liquors of Automotive Catalysts2019

    • 著者名/発表者名
      Manabu Yamada, Muniyappan Rajiv Gandhi, Kunda Uma Maheswara Rao, Haga Kazutoshi, Atsushi Shibayama
    • 学会等名
      World Summit on Advances in Science, Engineering and Technology (Indiana Summit 2019)
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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