研究課題/領域番号 |
18K11709
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
金子 聡 三重大学, 工学研究科, 教授 (70281079)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水素生成 / 炭酸ガス還元 / 光触媒 / 半導体 / メタノール / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
燃料電池技術の急速な発展に伴い、超長期的には水素をエネルギー源とした水素社会が構築されると考えられている。水素ガスの供給源として、最終的には水から水素を取り出すことが想定されている。しかしながら、水から水素を取り出す技術の確立には、まだかなりの時間を要することが予想され、中長期的には化石燃料などから、水素を生成することになると思われる。しかし、副生成物としてCO2やCOが発生するため、その処理技術の確立のためにも、CO2の変換・除去技術の開発は、大変重要な意味を持ってきている。このような状況の中で、電気化学及び光電気化学法によるCO2の還元技術は将来発展が期待されている最重要技 術の一つとして結論づけられている。 メタノール溶媒にCO2を吸収させ、銅電極を用いて高い電流効率でメタンやエチレンを生成させることが可能となりつつあるため、将来実用化できる可能性が大きいが、システムの実用化を鑑みると、エチレンやエタンなどの高次な炭化水素類をより高効率で得ることが必要である。 これまでのシステムでは金属電極を用いて還元を行ってきたため、今後はCO2還元やH2生成のための電極設計及び電極開発が、国内外のプラントメーカー・電力会社から求められてきている。したがって、CO2還元ための実用的な電気化学的還元セルの開発が必要である。本研究では、半導体ナノチューブ膜を電気化学的還元セルに組み入れ、CO2の新規反応セル、又はH2の光電気化学的生成セルを構築することが目的になる。本年度は、アノード側に酸化チタンナノチューブ電極を用いて、カソード側に金属電極を用いて、人口光合成的炭化水素類生成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CO2還元のための電極設計及び電極開発が、国内外のプラントメーカー・電力会社から求められてきおり、当初の研究計画では、金属又は半導体ナノチューブ 膜を電気化学的還元セルに組み入れ、CO2の新規反応セルを構築することであった。セルを構築してCO2還元を高効率で進行させる見通しができた。本結果は、日本への特許出願予定であり、国際特許も視野に入れている。 n型の半導体ナノチューブ電極をアノードに用いて、可視光/紫外光を照射すると、非常に低電位でカソード側においてCO2還元/H2生成が進行することが分かってきた。特に、n型の半導体ナノチューブ電極に酸化チタンナノチューブを用いて、酸化チタンにAg, Au, Cuなどの数nmの金属粒子を分散させると、プラズモン共鳴により、500 nm付近の可視光においても、量子効率10%程度の高効率で、CO2還元/H2生成が進行することを見出しており、特許と国際的な学術論文において、成果発表を予定している。 ナノチューブ電極を用いた水素生成も飛躍的に効率を向上させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画では、CO2還元に焦点を絞っていたが、n型の半導体ナノチューブをアノード電極に用いて、光電気化学的反応を進行させると、カソード電極上において高効率でH2生成も行うことが見出された。したがって、CO2還元/H2生成の両方を実施できる反応セルを構築し、幅広い特許を取得することを目指すことになった。 現在、ナノチューブの形状を最適化することにより、反応速度(電流密度)が著しくことなることが分かってきた。さらに、可視光の波長依存性も非常に大きいことが見い出されてきている。 したがって、反応性を高度化することにより、著しく反応系を向上させることができると考えられる。故に、高度なCO2還元/H2生成の還元セルを構築することができる可能性がある。今後は、ナノチューブ材料を用いる高効率水素生成法を検討する。炭酸ガスの還元と水素生成は、同じ還元反応であるため、還元系をうまく構築すれば、高効率の反応系を構築することが可能であると思われる。昨年と本年より、さらに還元系効率の向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、研究材料の購入を抑制し、来年度にナノチューブを最適化するための材料を購入する。
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