研究課題/領域番号 |
18K11711
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小西 宏和 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60379120)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 溶融塩 / 希土類金属 / ガス電極 / リサイクル |
研究実績の概要 |
本年度は、特に溶融塩中における酸素ガス電極の単極の電気化学的挙動を詳細に調査した。熱力学データから、実験温度である723KのLiCl-KCl共晶溶融塩中でO2 / O2-の標準電極電位2.471 Vは、Nd2Fe14B相とNd(III), Dy(III)の平衡電位よりも貴な値を示すことから、希土類磁石との間で電池反応が生じることが示唆された。O2ガス電極単極の電気化学的挙動の調査のために、723 KにてLi2Oを0.50 mol%添加したLiCl-KCl-Li2O混合浴においてグラッシーカーボン製のO2ガス電極を作用極として用いて、カソード分極実験を行った。流量50 ml/minで、溶融塩への浸漬長さを0.5~2.5 cmで変化させても電流値の変化は見られなかった。このことから、ガス電極での電気反応が生じる界面はガス電極の先端0.5 cm以下であることがわかった。また、ガス流量を10, 50, 100, 150 ml/minで変化させたところ、流量の増加に伴い電流値は増加した。さらに、ガス電極の反応界面積を増加させるため、ガス電極に金属多孔質体の導入を行った。金属多孔質体には多孔質Ni (気孔率:96.5%、気孔径:400μm)を選択し、グラッシーカーボン管の先端に装着し、カソード分極特性を調べた結果、多孔質Niを使用していない電極では1.84 Vでは8.28 mAであったが、使用した電極では32.21 mAと電流値が4倍程度増加した。他の電位範囲でも電流値は大幅に増加しており、O2ガスの還元反応の界面積が増加したことがわかった。さらに、723 KでO2ガス電極を作用極、Nd-Fe-B永久磁石を対極として極間電圧0.50 Vで26 h電圧印加したところ、Nd-Fe-B永久磁石からの希土類金属溶出を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の課題として、酸素ガス電極単極の電気化学的挙動について酸素濃度、分圧依存性、浸漬深さ依存性など、より詳細な最適条件を明らかにすることを設定した。当初の計画通り、種々の条件でカソード分極した際の電流と電位の関係を調査し、最適な条件を見出した。また、実際に実験温度450℃、ネオジム磁石をアノード電極、酸素ガス電極をカソード電極に設置して、酸素ガスを溶融塩中に導入し、希土類元素を溶出させることができたため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。これまでに得られた成果から、来年度に重点的に取り組む、ネオジム磁石をアノード電極、酸素ガス電極をカソード電極に用いた電池反応を利用した希土類金属の分離・回収に関する実用的なデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実験温度450℃、ネオジム磁石をアノード電極、酸素ガス電極をカソード電極に設置して、酸素ガスを溶融塩中に導入し、その際の電極間の電流・電圧を詳細に測定する。さらに、実際に電池を組んだ際の、電流と電位の関係を見出す。その際、選択的に溶出する希土類イオンNd(III)、Dy(III)、Pr(III)については浴中の濃度をICPによって分析して確認する。最後に、酸素ガス電極を塩素ガス電極へ取り換え、希土類元素の分離・回収を展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
電極や反応管の腐食および劣化が予想よりも少なかったため、物品費を大幅に削減することができた。また、年度初めに運営費交付金などの利用により他でも使用する共通消耗品の購入を制限することができたため、使用額が少し低くなった。来年度は塩素ガスを発生させ使用するため、消耗品が多くなることが予想され、設定した予定通りの費用またはそれ以上の費用を必要とする。
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